Milano

1週間ほど、テレビのないホテルばかりに泊まっていた。新聞が読めるほどイタリア語がわかるわけでもない。だから、いったい世界中でなにが起きているのか、いつも以上に知らなかったのだ。
「ベルリンの壁が崩れたわ」

ミラノへ戻る前日、友人は電話口で私たちにそう、告げた。

その前の年に、イギリスのモンスターズ・オブ・ロックの会場で人波に酔いしれていた頃、戦争がひとつ終結し、世界中で戦争のない一瞬が始まっていた。

その事実を私が知っていたかどうかで、何が変わるわけでもないのだけれど、「歴史的瞬間」から置いてきぼりをくったような、変な気持ちになったことは、確かだ。

明日は、ミラノ。

「新しい街へ着いたら、その街の一番高いところへ登って見渡すのが、その街を知る一番の方法」なのだそうだ。

ミラノでは、ドゥオモに登ってみよう。

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