| 「眺めのいい部屋」を探すと、フィレンツェに出かけた友人がいた。 旅行を計画している時に観た、フィレンツェを舞台にしたその映画がとても気に入ったのだと言う。確かに、その映画に美しく映るフィレンツェは、旅人の心をくすぐる。自分もあの街を歩きたいと思わせるに十分なのだ。 中でも印象的な光景は、タイトルにもあるとおり、ホテルの部屋から眺めるフィレンツェの街並みである。窓枠は額となり、切り取られた風景は絵画のようにスクリーンに広がる。そして目に飛び込んでくるのはサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂−−ドゥオーモ−−のオレンジ色のクーポラだ。 友人はどのように「眺めのよい部屋」を探したのだろう。フィレンツェの細い道を歩きまわったのだろうか。 今ほどには情報もないころのこと、またフィレンツェに長く滞在して、真剣に探したわけでもないのだろう、結局探し当てられなかったとがっかりして帰ってきた。 ”この前見つけられなかった「眺めのいい部屋」を探しにいく”……これは、次の旅の口実になるのではないかと、その時私は思った。そして、その次も、またその次も……。 |
★「眺めのいい部屋」 1983年製作のイギリス映画。主人公ルーシーがフィレンツェを訪れた際、通されたホテルの部屋は、予約した時にお願いしたはずの「眺めのいい」部屋ではなかった。窓から、街の景色もドゥオーモも見えないと言って不満をもらすルーシー。その時、眺めのいい自分たちの部屋との交換を申し出てくれたのは、ジョージだった。
「眺めのいい」丘、ミケランジェロの丘からの眺め ”部屋”からの眺めとは、ベッキオ宮の塔、ドゥオーモのクーポラの位置関係が違っている。 |
