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グッド・モーニング・バビロン! / Good morning, Babilonia

1915年、ピサ、アメリカ。 ハリウッド映画の創成期において、その美術スタッフとして映画製作に携わったイタリア人兄弟の物語。

トスカーナの歴史的建築物の修復を手がける一家。経済的理由から、家業を続けることを断念、7人兄弟の末の2人はアメリカへ渡ることに。アメリカでも簡単に職は見つかるはずはなく、苦労が続くが、D・W・グリフィスの映画の美術スタッフの仕事に就く。結婚もして順風満帆に見えた2人の生活は、あることをきっかけにバランスを崩してしまう。

全体を通して、兄弟・家族の結びつきの強さを感じる。2人の父親のセリフにそれが感じられる。
「いつも平等に一緒にいることがお前らの力だ。それを忘れると、仇同士になる」

もうひとつ、印象的なセリフを。イタリア人は怠け者だと、仕事をくれない製作主任に向かってニコラは言う。

「おまえらの先祖はいったい誰なんだ?俺達の先祖はミケランジェロとダ・ヴィンチだぞ! (Whose son are you? We are the son of the son of the son of the ・・・・・Michelangelo and Leonardo!)」

自分たちの腕に自信がなければ言わないセリフだが、それにしてもイタリア人にしか言えないこのセリフがいい。


ロケ地 / ピサ、アメリカ

ピサのドゥオーモが「奇跡の聖堂」として登場。兄弟が苦境に立たされるたび彼らの脳裏に去来する。


製作 / 1987 イタリア・フランス・アメリカ [英語作品(イタリア語部分あり)]
監督 /
パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ

キャスト / ニコラ … ヴィンセント・スパーノ
アンドレア … ジョアキム・デ・アルメイダ
父 …
オメロ・アントヌッティ
エドナ …
グレタ・スカッキ
媒体 / VIDEO,DVD cover

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グラン・ブルー / Le grand bleu

1980年代、タオルミーナ、ギリシャ、他。潜水の世界記録を競うジャックとエンゾ。海に魅入られた二人の男の友情。

幼い頃、ギリシャの海で出会ったジャックとエンゾ。時は流れ再びであった時、彼らは潜水の記録を競うダイバーとなっていた。ライバル、ジャックに対して彼を仲間として扱うと同時に、競争心をむき出しにするエンゾ。エンゾの誘いにのって選手権に現れたものの、自己の記録にしか関心のないジャック。そして、偶然出会ったジャックのことが忘れられず、彼に会いにニューヨークからタオルミーナへやってきたジョアンナ。潜水の新記録をつくるのはどちらなのか?ジャックとジョアンナの恋のゆくえは?

ストーリーとともに、タオルミーナの美しい海を堪能してほしい。

イルカの写真を見せて「僕の家族なんだ」と言うジャックは、ジョアンナと恋に落ちるが、人間の女性とうまく接することができない。ベッドからひとり抜け出し、一晩中海でイルカと遊んでしまったりする。「海に潜ると、地上に帰ってくる理由がない」とつぶやくジャック。ジャックは海を選んだのか?

エンゾのマンマは私たちのイメージどおりのイタリアのマンマ。エンゾの潜水記録が出れば、集まってくれた友人たちに山盛りのパスタを振る舞い、エンゾがレストランのパスタを食べたとわかれば、険しい表情になる。大の男のエンゾもマンマにはかなわない。

ジャック、エンゾともにモデルとなった人物がいる。エンゾのモデルとなったエンツォ・マイオルカ氏が、映画での描かれ方に納得がいかないとして、訴訟を起こし(不満を持っていた点のひとつは、最愛のマンマが「不機嫌で醜い存在」として描かれていたことだとか)認められたため、イタリア国内ではこの映画は上映されていないという。


ロケ地 / タオルミーナ、ギリシャ他

ロケに使用されたホテルは、2個所。

  • San Domenico Palace … 修道院を改装したホテル。ガーデン・パーティー、中庭を囲むガラスの回廊。
  • Capo Taormina … 海岸へ通じる洞窟、岩場にある海に面したレストラン(パスタを食べるシーン)、プール。 このホテル、ランチはビュッフェなので、ディナーでしかスパゲッティを食べることはできない。そして、宿泊客でないとレストランに入れないらしい。

製作 / 1988 フランス [フランス語作品]
監督 / リュック・ベッソン

キャスト / ジャック … ジャン・マルク・バール
エンゾ …
ジャン・レノ
ジョアンナ … ロザンナ・アークエット
媒体 / VIDEO,LD,DVD
サウンドトラック / グラン・ブルー

… 10曲目に「スパゲッティ・デル・メア」とありますが、英文でリストされた曲目を見ると「Spaghetti Del Mare」。スパゲッティ・デル・マーレ(=海の幸のスパゲッティ)のはずなんですが、タイトル翻訳時のチェック漏れでしょう。

Gallery
Official site (フランス語)

ジャックのモデル、ジャック・マイヨール氏についてはこちらで
Jacques Mayol

 

 

 

 

グランブルー [ポスター]
 

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黒い瞳 / Oci ciornie

1970年代、ローマ、モンテカティーニ、レニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)

ギリシャからイタリアへ向かう船の中のレストランで話は始まる。偶然知り合ったロシア人にロマーノは過ぎた日の思い出を語り始める。大学時代に知り合った銀行家令嬢と結婚し、「逆玉」にのったロマーノ。年を重ねるにしたがって、自分の居場所がなくなっているのを感じ、ある年、ふらっと温泉地モンテカティーニへやってきた。そこで出会ったロシア人女性に恋をし、彼女を追いかけてレニングラードへ。その後のストーリー展開は先が見えてしまうありきたりなもの。

欲しいと思っていたものが、手に入ってしまうと、いや、手に入れられるとわかった時から、それは徐々に魅力を失ってしまうのかもしれない。少なくともロマーノにとっては、その程度の恋だったのだろう(男性に都合がよくできた話なのだが)。恋が愛に変わるには、片方だけがいくら思いをつのらせても、どうなるものでもない。

テルメ:イタリアの温泉。 日本の温泉のように入浴するものと、鉱泉を飲むものとがあり、舞台となったモンテカティーニは後者。飲泉場があり、のんびりと読書をしたり、音楽をきいたりしながら、温泉を飲むのである。入浴するものも、お風呂というよりは、プールという感じである。

映画では、泥(と思われる)の温泉のプールも出てくる。 そのプールに落ちてしまった彼女の帽子を拾うため、真っ白なスーツが汚れるのも構わず、プールに入り帽子を拾うロマーノ。ついでに、プールに浮かべてあった花も一緒に持ってきて渡すところなど、いかにもイタリア男っていう感じだ。


◎ロケ地 / ローマ、モンテカティーニ、レニングラード

モンテカティーニはフィレンツェから1時間ほどの温泉の街。肝臓・胃腸・リューマチに効く温泉として、世界中のお金持ちから愛されてきた高級リゾート。


製作 / 1987 イタリア
監督 / ニキータ・ミハルコフ
 
キャスト / ロマーノ … マルチェロ・マストロヤンニ
アンナ … エレナ・ソフォーノワ
エリーザ …
シルヴァーナ・マンガノ

原作 / 「犬を連れた奥さん」 … チェーホフ 『かわいい女,犬を連れた奥さん
 新潮文庫 小笠原 豊樹【訳】
媒体 / VIDEO,LD,DVD

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月曜日に乾杯! / Lundi matin

2000年代、フランス、ヴェネツィア。ふとしたことから、平凡な毎日から抜け出したヴァンサン。フランス郊外の村から、世界の観光地ヴェネツィアへ。新鮮な体験をするのもつかの間、ヴェネツィアにはヴェネツィアの日常があることに気づく。

平凡で退屈な一日は、前の日と寸分違わぬ繰り返し。朝脱いだ靴は、帰ってくるまでそのままの場所にある。でも、その繰り返しをやめたくなったら?変えることができると気づいたら? 朝出かけたきり帰らなければ、靴は?

日常から非日常への逃避/脱出というモチーフはありふれたものだけれど、特徴的なのは、”力の抜け具合”。繰り返される毎日に嫌気が差してはいても、それが爆発した結果の行動でもなければ、脱出のために準備を続けていたわけでもない。今の生活から抜け出したら、やりたい何かがあるわけでもない。妻にうんざりしてはいても、他の女性に目移りしたわけではない。ヴァンサンを突き動かす積極的な動機はなく、彼はただふらっと、なんとなく、日常から抜け出していくのだ。

日常から抜け出したという点では、(そして行き先も)「ベニスで恋して」と同じだけれど、ドラマチックな展開など全然なく、小さな笑いと、小さな発見とを積み重ねて淡々とすすむストーリー。いろいろなモチーフを繰り返し使うことで、おかしさ、変化のない日常、異なるものの同一性をさりげなくみせてしまうのは、うまい。

ピッタリの俳優が見つからず、監督自らが演じたというヴェネツィアの侯爵には、大笑い。

ヴァンサンの息子が教会で描いているのは「聖ゲオルギウスの竜退治」。聖ゲオルギウス(=サン・ジョルジョ)はヴェネツィアの守護聖人のひとりでもあるそうだ。

話題の超大作によくある”どうだ、スゴイだろう”的な部分が少しもなく、観る側も力を抜いてのんびりと観られるような肩に力の入ってない作品。いい意味で。


◎ロケ地 / ヴェネツィア、フランス

ヴェネツィアで知り合ったカルロが、「住人にしか見られないヴェネツィアの風景」と見せてくれたのは、大きな教会の裏手の建物の屋根の上からの風景だった。

地理的にはおそらくサン・マルコに近く、また鐘楼がなく、後陣が放射状になっていることから、彼らが見た教会はサン・ザッカリーア教会ではないかと思われる。


製作 / 2002 フランス・ イタリア
監督 / オタール・イオセリアーニ

キャスト / ヴァンサン … ジャック・ビドウ
トイレ番 … マニュ・ド・ショヴィニ ……本作品の美術監督でもある
マルティーノ侯爵 … オタール・イオセリアーニ
媒体 / VIDEO,DVD

Gallery
Official site

cover

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建築家の腹 / The Belly of an Architect

1980年代、ローマ、ヴェンティミリア、ティヴォリ。建築家ブーレの展覧会の準備のためローマを訪れたアメリカ人建築家クラクライト。彼を巡る生と死。

実際に建築されたものがないという伝説の建築家・ブーレの展覧会を開催するために、クラクライトは妻・ ルイザとともにローマへ赴く。準備が始まるとほどなく、腹痛に襲われたクラクライト。アウグストス帝の死因、妻が妊娠したこと、そして彼女が浮気していることを知った彼は、”生”へ執着するかのように、”腹”への執着を見せるのだった。

拡大コピーを繰り返すように、自分自身で不安を増幅していき、ついにはその大きさ/重さに持ちこたえられなくなってしまう。普通であれば妻や友人が打ち消してくれるであろうその不安を、吐き出すことができずに追いつめられていく建築家が哀れである。

クラクライトに死の不安を抱かせるのも”腹”であれば、ルイザが新しい生を宿すのも”腹”。新しい生命が誕生した時に、命を絶つ者。死を予感させる建築物−アウグストス帝廟、墓所としてのパンテオン、ブーレのデザインによるニュートン記念堂、無名戦士の墓があるヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂。パズルのような符合もグリーナウェイならでは。

建築がテーマのひとつであるこの作品は、ローマの新旧の建築物に着目して鑑賞するのもおもしろい。

エチエンヌ・ルイ・ブーレはフランス革命期に実在した建築家。理論や構想を描いたドローイングでその名を知られているようだが、彼の設計により建てられた建築物はないとのこと。


ロケ地 / ローマ、ヴェンティミリア、ティヴォリ

ヴェンティミリア : 寝台車でフランスからの国境を越える

ローマ

  • ポポロ広場 … タイトルバック
  • パンテオン、ロトンダ広場 … クラクライト歓迎のパーティー、酔ったクラクライトが食事をする客にからむシーン
  • ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂 … 昼食会の場所[記念堂のテラスからコロッセオ、サン・ピエトロ大聖堂、サンタニェーゼ・イン・アゴーネ教会(ナヴォナ広場)を臨む]。
    ブーレの展覧会の会場
  • アウグストス帝廟
  • サン・ピエトロ広場 … クラクライトがハガキを投函する
  • フォロ・ロマーノ
  • ナヴォナ広場 … 彫刻の「腹」の写真を撮るシーン
  • EUR、労働文明宮
  • カピトリーノ美術館 … クラクライトが取り調べを受けるシーン(実際には大きな「腹」の彫刻はない)

ティヴォリ

  • ハドリアヌス帝の別荘 … ルイザとカスペジアンが訪れる場所

製作 / 1987 イギリス [英語作品]
監督 / ピーター・グリーナウェイ

キャスト / クラクライト … ブライアン・デネヒー
ルイザ … クロエ・ウェッブ
カスペジアン(ルイザの浮気の相手) … ランベール・ウィルソン
媒体 / VIDEO,LD ,DVD(DVD BOX
     (DVDは「ZOO」「数に溺れて」を含む3枚組のBOXのみ)
サウンドトラック / The Belly of an Architect (Soundtrack)
             (アメリカ盤) →

Fan Page (イタリア語)

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ゴッドファーザー / The Godfather
1950年代、アメリカ、シチリア。アメリカで暗躍するマフィアのファミリー、コルレオーネの世代交代。

ファミリーをまとめるゴッドファーザーであるヴィトが、抗争の中で凶弾に倒れる。一命を取りとめたものの、それをきっかけに、マフィアのファミリー間の抗争が表面化した。この事件は、ファミリーの中で、”堅気”であった末の息子、マイケルをも巻き込んでいく。マイケルは愛する者が危険にさらされ、命を落としていく中で、彼らを自分の手で守るため、父の後を継ぎゴッドファーザーとして生きる道を選ぶ。

 

 

 

 

ゴッドファーザー [ポスター]
4860907256

結婚式の当日に部屋の中で行われていた復讐の打ち合せ、洗礼式と同時に進行する粛正。明と暗の対比が見事。特にラストシーン間近には、生の儀式と死の儀式が交互にスクリーンに映し出される。そのシークエンスに、死の儀式の残酷さ、慄然とする恐怖が増す思いがする。計算されたストーリーと映像を楽しんでほしい。

ファミリーの血のプライド、濃密な家族の結びつき、排他的な愛などを強く感じるが、共感できるという質のものではない。むしろ、時代も背景も違うが、日本の武士のそれと近いのではないかとさえ思う。

シチリアは、ヴィトの故郷でもあり、この作品では、マイケルが一時身を隠す場所として出てくる。マイケルが移動の途中見初めた女性に結婚を申し込むくだりがあるが、そこでは相手の女性は話に入ってこない。マイケルと女性の父親とで話をして、女性の意志など確認せずに話は進むのである。ファミリーが男系であることの根底には、このような社会が少なからず影響しているのだと想像できる。

それはさておき、シチリアでの結婚式の光景は、冒頭のそれとは違って、なんとものどかでアットホームな感じである。ここでは新郎新婦が列席者にドラジェを配る場面も見られる。ドラジェとはアーモンドを砂糖でコーティングしたもので、イタリア語ではコンフェッティと呼ばれるお菓子。古代ローマ時代に端を発し、アーモンドがたくさんの実を実らせるように子宝にめぐまれることを願って、披露宴のお開きに新郎新婦が一人一人に手渡しする習慣がある。

また、ファミリーのメンバーがイタリア系だと言うこともあり、ところどころで、イタリア語が飛び出す部分もある。字幕もつかないほど、本筋には影響のないセリフだが、わかる方は聞いてみてほしい。また、それぞれの名前もイタリア読みになっている(マイケル→ミケーレなど)部分がある。

血族としての家族、ファミリーの構成員、敵対するファミリーと登場人物が多く、また利害関係も複雑に絡むので、状況を把握していないと、ストーリーの意味がわからなくなってしまうのが、難点か。

シリーズを通して、”死”を予感させる場面にはオレンジが登場していることがある。鑑賞の際にはチェックしてみよう。


ロケ地 / シチリア、アメリカ

  • フィウメフレッド … シチリアでマイケルが隠れ住んでいた家・車の爆破シーンに使用された家は個人宅ではあるが、現在は結婚式や展覧会に部屋を貸し出したりもするそうである。
    所有者:フランコ・プラタニア
    連絡先:+39-0387−585−3610
    住所:Castello degli Schiavi-Fiumefreddo
  • シチリアには、コルレオーネ村というヴィト・コルレオーネの出身地という設定の村が存在するが、ロケ地ではないとのこと。(ちなみにこの村は実際にシシリアン・マフィアのリーナ・ファミリーの本拠地だったらしい)

製作 / 1972 アメリカ [英語作品(一部イタリア語部分あり)]
監督 / フランシス・コッポラ

キャスト / ヴィト … マーロン・ブランド
マイケル … アル・パチーノ
ケイ … ダイアン・キートン
コニー … タリア・シャイア
マイケル・フランシス・リッツィ(ラストシーンに登場するコニーの赤ちゃん) … ソフィア・コッポラ
(監督フランシス・コッポラの娘。 本作撮影中に誕生したのだそうだ。シリーズ3作目にはメアリー役で出演している)

原作 / マリオ・プーツォ 『ゴッドファーザー 上』『ゴッドファーザー 下』 早川書房 一ノ瀬直二【訳】
媒体 / VIDEO,LD,
DVD (PART 1のみ),Blu-ray
     PART 1-3 → ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX
               ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション ブルーレイBOX
     PART
1、ゲームの紹介DVD → ゴッドファーザー -GAMEへの招待-
    
PART 1-3、ゲームの紹介DVD → ゴッドファーザー DVDコレクション -GAMEへの招待-
サウンドトラック / ゴッドファーザー

ゲーム / ゴッドファーザー 完全日本語版(WIN XP)

Official site
Official site (英語)
Fan Page (The Godfather Epic 1901-1959)
Fan Page (GENCO PURA)
Fan Page (英語)

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ゴッドファーザー PART 2 / The Godfather, PART 2

1950年代。アメリカ、シチリア。前作でファミリーのゴッドファーザーとなったマイケルの苦悩と先代ヴィトがゴッドファーザーとなるまでのストーリーが交互に映し出される。

先代の後を継いでゴッドファーザーとなったマイケル。ファミリーに生じた変化はリーダーの交代にとどまらなかった。末の弟から指図されることになり不満を抱える兄。ファミリーの権力を掌握するために敵対する組織と通じる者。夫の”ビジネス”についていけなくなった妻。マイケルが彼らのために動けば動くほど、彼らはマイケルから離れていってしまう。そして、ファミリーに害をもたらすものをひとつずつ消していくうちに、彼はいきつくところまで来てしまった。

家族を、愛する者を守るため、と思って行動したことが、結果的に家族を恐怖させる。組織のリーダーであり、表面上は大勢の人に囲まれていながらも、孤独であるマイケル。トップに立つものが抱えるジレンマをマイケルもまた抱えている。だが、ファミリーの存在は彼の手でコントロールできる範囲を超えて一人歩きをするかのようになってしまう。

ヴィトがシチリアから渡ってきて、ビジネスを成功させるまでのエピソードが途中に織り込まれる。一握りの仲間とビジネスを立ちあげてきた彼の時代と、マイケルの時代とでは差があることを我々は知る。

シチリアはヴィトの故郷として登場し、彼がアメリカで成功の足がかりをつかんでから帰郷、家族の復讐を果たす場面がある。ここで、話題になるのは特産品であるオリーブオイル。商品をアメリカに輸入・販売する権利を交渉しにきたのである。

ラストシーン、マイケルもまた、そのような結果を望んでいたわけではない、その彼の寂しさが画面いっぱいにひろがる。

単品で観ても十分楽しめる作品であるが、時間が許せば、シリーズの1本目から順に観てほしい。大河ドラマ的な楽しみが味わえるのと同時に、ストーリーの理解が深まるだろう。


ロケ地 / シチリア、アメリカ


製作 / 1974 アメリカ [英語作品(一部イタリア語部分あり)]
監督 / フランシス・コッポラ

キャスト / ヴィト … ロバート・デ・ニーロ (青年時代)
マイケル … アル・パチーノ
ケイ … ダイアン・キートン

原作 / マリオ・プーツォ 『ゴッドファーザー 上』『ゴッドファーザー 下』 早川書房 一ノ瀬直二【訳】
媒体 / VIDEO,LD,
DVD (PART 2のみ),Blu-ray
     PART 1-3 → ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX
               ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション ブルーレイBOX
サウンドトラック / ゴッドファーザー  パート2

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ゴッドファーザー PART 3 / The Godfather, PART 3

1970年代。アメリカ、シチリア、ローマ。 年老いたマイケルはゴッドファーザーの座を退き、その座を甥のヴィンセントに譲る。

あれから20年が経過し、ファミリーのビジネスは、堅気の商売へと変化してきていた。マイケルの息子はオペラ歌手としての道を歩き始め、娘・メアリーは慈善団体の名誉理事を務める。かつてとはすっかり変わったと思うのもつかの間、マイケルの長兄ソニーの息子であるヴィンセントが問題を起こす。最初は、血の気の多いのは父親譲りと、軽く諭すだけだったが、トラブルは収まらず、抗争は激化していく。マイケルはその座をヴィンセントに譲り、引退するのだが・・・。

ストーリーは引き続き、血とプライドを守るファミリーの物語。世代が代わっても、その構造は簡単には変えられないことを思い知らされる。(3本目ともなると抗争のシーンは食傷気味である)

この作品でシチリアは、マイケルの息子が初舞台(ピエトロ・マスカーニの歌劇『カヴァッレリーア・ルスティカーナ』)を踏む地として出てくる。かつての妻ケイと、故郷の街でつかの間の散歩を楽しむマイケル。その姿は、楽しそうでもあり、哀れでもある。

クライマックス、華やかなオペラ観劇の裏で進行する暗殺計画。ここでも、PART1同様、明と暗の対比が鮮やかにきまる。そして、劇場の階段で、マイケルの生はその”時”を刻むことを止めてしまうのである。ストーリーとしての新鮮さには欠けるかもしれないが、前作からの作品中の時間経過(20年)を、現実の時間経過と一致させたため、前作に出演した俳優が年を重ね、同じ役を演じている。作為的でない時間経過が生み出すはリアリティは、他の作品には見られないものだろう。

ヴィンセントがニョッキの作り方をメアリーに教えるシーンがある。ニョッキは形や作り方など、その家庭ごとに特色があり、つまりマンマの味でもあるのだが、それをメアリーに教えるというのは意味深な行為ともとれる。

コニーが自分の名付け親を毒殺するために使うお菓子はカンノーロというシチリアのお菓子。薄いビスケットを筒状にしたものにリコッタ・チーズをたっぷり詰めアクセントに砂糖漬フルーツをのせたもの。

単品で観ても十分楽しめる作品であるが、時間が許せば、シリーズの1本目から順に観てほしい。大河ドラマ的な楽しみが味わえるのと同時に、ストーリーの理解が深まるだろう。

アンディ・ガルシア、レオナルド・ディカプリオ出演によるシリーズ第4作製作の噂が囁かれたが、原作・脚本のマリオ・プーツォ氏の他界のため、本作が最終話となった。


ロケ地 / シチリア、ローマ (ヴァチカン)、アメリカ

  • マッシモ劇場(パレルモ) … オペラ終了後のクライマックスシーンはこの劇場の大階段。名前のとおり客席数3200の大劇場。ちなみに劇場内部はチネチッタ内のセットである。
  • タオルミナ・ジャルディーニ駅 … 電車で着いたケイをマイケルが出迎える。
  • フィウメフレッド … マイケルが最期を迎えるシーン(個人宅・ シリーズ1作目で、マイケルが隠れ住んでいた家)

製作 / 1990 アメリカ [英語作品(一部イタリア語部分あり)]
監督 / フランシス・コッポラ

キャスト / マイケル … アル・パチーノ
ヴィンセント … アンディ・ガルシア
ケイ … ダイアン・キートン
メアリー … ソフィア・コッポラ
(監督フランシス・コッポラの娘。ウィノナ・ライダー降板により抜擢される)
コニー … タリア・シャイア

原作 / マリオ・プーツォ 『ゴッドファーザー 上』『ゴッドファーザー 下』 早川書房 一ノ瀬直二【訳】
媒体 / VIDEO,LD,
DVD (PART 3のみ),Blu-ray
     PART 1-3 → ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX
               ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション ブルーレイBOX
サウンドトラック / ゴッドファーザー パート3

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湖畔のひと月 / A month by the lake

1930年代、コモ。毎年休暇をコモ湖畔で過ごす50代の独身カメラマン、ミス・ベントリー。コモのホテルで出会った人たちとの関係と恋のゆくえ。

例年のようにコモ湖畔で一ヶ月ほどの休暇を過ごすミス・ベントリー。いつもと違っていたのは、その年、徐々に少なくなってきていた英国からの客の中に、魅力的な男性を見つけたこと。ただ、若さにまかせて行動するような年はとっくに過ぎていたゆえ、穏やかに会話を交わすのが関の山。そこへ現れたのが、イタリア人家族のベビーシッターとして雇われた若いアメリカ人のミス・ボーモント。ウィルショー少佐はすっかり、若いミス・ボーモントに夢中に。二人の仲をとりもとうとしつつも複雑な思いのミス・ベントリー。自分の気持ちに気づいているのか、いないのか。

遅々として進まない中年の恋に、アクシデントが加わることで発展するという、ストーリーとしてはありきたりのもの。

カメラマンであるミス・ベントリーの作品として映し出される人物や風景はことのほか素敵である。コモ湖畔の風景とともに楽しみたい。

一緒に出かけたり、食事をしたりするほどに仲良くなってからもなお、ラストネームや肩書きで互いを呼び合うのは、身分ある英国人を強調するためか。

時刻表通りには動かないことも多いといわれるイタリアの交通機関だが、腕時計の遅れのせいで、定期船に乗り遅れるミス・ベントリーとウィルショー少佐。こんな時に限って正確に時刻表通りに運行するとは。


ロケ地 / コモ


製作 / 1995 イギリス [英語作品]
監督 / ジョン・アーヴィン

キャスト / ミス・ベントリー … ヴァネッサ・レッドグレーヴ
ウィルショー少佐 … エドワード・フォックス
ミス・ボーモント … ユマ・サーマン
シニョーラ・ファショーリ(ホテルの女主人) … アリダ・ヴァッリ
ヴィットリオ … アレッサンドロ・ガスマン (ヴィットリオ・ガスマンの息子)

原作 / H・E・ベイツ
媒体 / VIDEO

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