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ペッピーノの百歩  / I cento passi

1948年〜1978年、チニシ(シチリア)。マフィアの家系に生まれながら、マフィアと戦った実在の人物、ペッピーノ・インパスタートについてのストーリー。

父も叔父たちもマフィアという家系に生まれたペッピーノは、慕っていた叔父の死因に疑問を抱き、それをきっかけにマフィアという組織について考えるようになる。また、マフィアのボス、ターノに反感を感じ、共産主義に傾倒し、新聞やラジオのメディアを利用してマフィアを糾弾した。ついには議員に立候補するが・・・。


ターノは悪である、と単純に切って捨てられるほど物事はシンプルではない。マフィア/ターノの存在を糾弾しているものの、自身の安全を保障しているのもまた、マフィア/ターノなのである。マフィアが悪いと簡単に言えるのは、我々が当事者ではないからだ。

だから既存の価値観に疑問を感じ何かを変えようと、そして変えられると信じて行動するペッピーノの”熱さ”と、現実の冷淡さを作品から感じる。

彼の熱さが仲間に、家族に、街の人々に波及していく。抗しがたい存在であるはずのマフィアと闘って、志半ばで殺されてしまったが、その意志は皆の胸に残っていたのだ。母が窓から外を見た時には、思わず涙。重いけれど、その分満腹感を味わえる、”熱い”作品。

エンドロール後に映し出される写真は、実際のペッピーノのもの。作品のスチルではない。映画出演には強い興味がなく舞台で活動していたロ・カーショが、主役に抜擢された決め手のひとつはそのルックスにもあったと、製作のファブリツィオ・モスカ氏は講演会で語っていた。

葬儀のシーンで映るロザリオの珠を手繰る手。念珠を手繰ることで、祈りの回数を数えているのである。

ペッピーノが朗読する詩はパゾリーニのもの。タイトルなどは不明。
上映されている映画はフランチェスコ・ロージの「Le mani sulla città(日本未公開)」

挿入されるニュース映像は、1978年に起こった「赤い旅団」によるアルド・モロ誘拐殺人事件。この事件をテーマにしたベロッキオ監督作品「夜よ、こんにちは(原題:一般公開の予定あり)」に、ロ・カーショはテロ側の人間として出演している。

なお、ペッピーノの死後約20年たった1996年に、ターノがペッピーノ殺人の容疑で起訴されたということである。


ロケ地 / チニシ


製作 / 2000 イタリア
監督 / マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ

キャスト / ペッピーノ … ルイジ・ロ・カーショ
ペッピーノの父 … ルイジ・マリア・ブッルアーノ (ロ・カーショの叔父であり、
                         彼をペッピーノ役に推薦したのもブッルアーノだそうだ)

媒体 /
サウンドトラック / 海外盤も含めサウンドトラックは出ていないようである。
                          印象的に使われている曲はプロコル・ハルムの「青い影
            アメリカ盤では試聴可(Whiter Shade of Pale)。

Official site
Official site (イタリア語 ・英語ほか)

関連サイト / Peppino Impastato (イタリア語)
         Centro Siciliano di Documentazione "Giuseppe Impastato"
         (イタリア語)

本文中の画像は掲載の許可を受けております。転載はご遠慮ください。

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ベニスで恋して / Pane e tulipani

1990年代、ヴェネツィア、ペスカーラ、パエストゥム。いくつかの小さな偶然とほんの少しの冒険心から、平凡な主婦が体験する旅先での出来事。

ペスカーラに暮らすロザルバはいわゆる”平凡な”主婦。ある日ロザルバは、家族旅行の先でサービスエリアに置き去りにされてしまった。それをきっかけに、憧れの街、ヴェネツィアを訪れてみたロザルバ。1日だけの観光のはずが、レストランで働くフェルナンドのアパートに世話になり、隣人のグラツィアとも仲良しになり、花屋で仕事を始めて、ヴェネツィアに住むことに。ロザルバを元の生活に連れ戻そうとする夫と、もっと”休暇”を楽しみたいロザルバ。そんなロザルバと暮らすフェルナンドは、気付けばロザルバのいる生活が、日常となってしまっていた。

ストーリーは、日常から抜け出した主婦の旅先での出会いを描いたもの。情熱だけを原動力に行動できるような人々に背中を押してもらってやっと前に進めるような、そんな人の話である。

前半は、どじなロザルバ、堅苦しい振舞いのフェルナンド、アナーキストの花屋のおじいさんやポップな隣人・グラツィアなど人物が細かに描写されていて、これからこの愛すべき人々が何を起こすのか楽しみになってくる。それに比べて、後半はロザルバの感情の描写が少なくて、説得力に欠ける感も。

全体を「ローマの休日」の”主婦版”、”ヴェネツィア版”と思って観てしまうと、物足りなさが残るのは否めない。

アコーディオンを奏でるラストの彼女の表情を見れば、それが彼女の望んでいた結末であることは疑いようがないのだが、それが、自分をひとりの女性として扱ってくれる男性に愛を感じたからだというのは、伝わってこないからである。
オリジナルタイトルの「パンとチューリップ」は、「肉体と同様に魂も飢えによって滅びる。パンをよこせ!そしてバラの花も!」というアメリカの労働者のストライキのスローガンからとられたという。(バラがチューリップになったのは、監督の好みだそうだ。)

最後にロザルバが手にしたものは、今まで他者の為に後回しにしてきた自分の為の時間。ロザルバに朝食のパンを用意したフェルナンド。フェルナンドにチューリップの花を残したロザルバ。だが、飢えていたロザルバの魂にチューリップを手向けてくれたのは、フェルナンドのほうだったのではないだろうか? 単なるラブ・ストーリーではなく、精神的に満たされた生活を手にした人々の話として、楽しみたい作品である。

お腹をすかせた息子になど構わず「ダイエット中なの」と、そそくさと帰ってしまう母親。ロザルバを駅に残し時間通りに出発する列車。実際のイタリアは我々のイメージ通りのものばかりでもないようだ。(イメージ通りのマンマもひとり登場するが)

フェルナンドの名字は「ジラソーリ(ひまわり)」。このあたりは、監督のお遊びか?

本文中の画像は掲載の許可を受けております。転載はご遠慮ください。


ロケ地 / ヴェネツィア、ペスカーラ、パエストゥム

ヴェネツィア … サンタ・ルチア駅、サン・マルコ広場。両替所のガラスに映るサン・マルコ寺院、ロザルバのサン・グラスに映る鐘楼。それ以外は、運河からドゥカーレ宮が臨む風景が少し出てくるぐらいで、観光地としてのヴェネツィアはほとんど出てこない。

ペスカーラ … ロザルバが住んでいる街。

パエストゥム … ロザルバたちが家族旅行で訪れる遺跡。


製作 / 2000 イタリア・スイス
監督 / シルヴィオ・ソルディーニ

キャスト / ロザルバ … リーチャ・マリェッタ
フェルナンド … ブルーノ・ガンツ
グラツィア … マリーナ・マッシローニ

媒体 / VIDEO,DVD

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Official site
Official site (イタリア語)

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ベニスに死す / Death in Venice

20世紀初頭、ヴェネツィア、リド島。静養のためヴェネツィアを訪れた作曲家。彼の前に現れた美しい少年タジオ。美を求めるがゆえの愛と、愛ゆえの孤独、そして死。

本国での音楽活動に疲れ、静養のために、ヴェネツィア、リド島を訪れたアッシェンバッハ。そのリドで彼の目を捕らえたものは、美少年タジオだった。芸術家として、美を探求する者として、美とは何であるかを常に意識せざるをえなかったアッシェンバッハ。人の手によって生み出される造形が美となるのか、神によってこの世にもたらされる、自然が美であるのか。

美少年タジオは、そんなアッシェンバッハの迷いを吹き飛ばすかのように、彼の前に現れた。完璧な美の具現として。ホテルのダイニング・ルームで、リドのビーチで、ヴェネツィアの街角で、彼の目はタジオを追わずにはいられない。そして、アッシェンバッハはヴェネツィアを離れることすらできなくなってしまう。

作曲家マーラーをモデルとしたトマス・マンの小説が原作。ことば少なく、淡々とした耽美的な作品。タジオへの思いが募り、彼の気を惹こうとするアッシェンバッハの行動が憐れみを誘う。非の打ち所のないタジオの美しさは「造りもの」のようだ。


ロケ地 / ヴェネツィア、リド島

リド島

  • Hotel des Bains …  映画中たびたび登場するビーチは、このホテルのプライベートビーチ。

ヴェネツィア本島部分の撮影はフェニーチェ劇場近辺とのこと


製作 / 1971 イタリア・フランス [英語作品]
監督 /
ルキノ・ヴィスコンティ

キャスト / アッシェンバッハ … ダーク・ボガード
タジオ …
ビョルン・アンドレセン
タジオの母 …
シルヴァーナ・マンガノ
原作 / トオマス・マン 『ヴェニスに死す』 岩波文庫 実吉 捷郎【訳】
関連書籍 / L. ヴィスコンティ 『ベニスに死す  ヴィスコンティ秀作集
         新書館 柳沢一博 【訳】

媒体 / VIDEO,LD,
DVD
    ヴィスコンティ DVD-BOX 3に特典映像として「タッジオを探して」が
     収録されている

サウンドトラック / Soundtrack From The Film Death In Venice

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ベニスに死す


 


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ベリッシマ/ Bellissima

1950年代、ローマ。自分の娘を映画スターにしようと奔走する母親を描いたコメディ。

大監督ブラゼッティの新作映画の子役オーディションに、チネチッタを訪れた
マッダレーナ。娘のマリアは一時審査を通過したが、マッダレーナは次の審査のために髪型・洋服・演技のレッスンとマリアに磨きをかけ、「コネクションが大切」「オーディションは出来レースらしい」という噂に翻弄される。娘を映画スターにという思いが先行し、本人の気持ちも、家族への思いやりも、新居の購入も後回し。マリアは見事、オーディションに合格するのだが……。

バイタリティ溢れるイタリアのマンマをマニャーニが好演。

オーディションには合格させたいけれど、そのために何か特別なことをするのはどうかと思っていたのは最初のうちだけ。元女優が「演技指導を受けないか?」と訪ねてきたり、写真屋で会った女の子がバレエのレッスンを受けていると知ったりすると、徐々に不安になりあれもこれもと手を出し始めるのである。周囲に振り回され奔走する
マッダレーナも、マッダレーナに振り回されとまどうマリアも滑稽である。 その光景は、背景は違えど、日本のお受験のそれを彷彿させる。その努力はいったい誰のためなのか。

映画業界の内幕について描かれている部分もあるが、見どころはやはり、
マッダレーナを中心とするローマの庶民だろう。サッカーの試合が始まるからといそいそと出かけたり、アパートの中庭から大声を張り上げて、上の階と下の階とで連絡をしたり、マッダレーナの家で夫婦喧嘩が始まれば、すぐに大勢が集まってきたりするのである。

ベリッシマはbella(=可愛い)の最上級。「Bellissima Oggi, domani, mai」と題されたオーディションは、さしずめ美少女コンテストといったところ。本作品発表当時は、ネオレアリズモ華やか りし頃。「自転車泥棒」「靴みがき」などで子役も含め、素人俳優の起用が多かった。実際に「我が子を映画スターに」と願った親も多かったろうし、またそのチャンスもあったのではないかと思う。そういった時代背景をこの作品は反映している。(ヴィスコンティ自身は、そういった風潮を批判したり、皮肉的意味合いでこの作品を撮ったわけではないと言っている。)

ヴィスコンティ作品の中では、異色のコメディ。マニャーニと仕事をしたいがために選んだ脚本だという(「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の際マニャーニを起用できず、他の彼女主演の映画制作の話も頓挫してしまうなど、チャンスに恵まれていなかった)。マニャーニを観るための映画といっても過言ではないほど、彼女の魅力、持ち味が発揮された作品である。

ラストに流れる映画はバート・ランカスターの出演作。「山猫」「家族の肖像」と後の重要なヴィスコンティ作品で主役を務めるランカスターがここに登場していたのは、偶然とはいえ、やはり縁があったのだと思わずにはいられない。


ロケ地 /  ローマ

チネチッタ撮影所


製作 / 1951 イタリア
監督 /
ルキノ・ヴィスコンティ

キャスト / マッダレーナ … アンナ・マニャーニ
アンノヴァッツィ(マッダレーナと知り合う映画業界の男) … ヴァルテル・キアーリ
マリア … ティーナ・アピチェッラ
アレッサンドロ・ブラゼッティ … 本人役:サイレント時代から活躍している映画監督である。
媒体 / VIDEO,DVD/ヴィスコンティ DVD-BOX 3

 

ベリッシマ

 

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ベルボーイ狂騒曲/ベニスで死にそ〜 / Blame it on the Bellboy

1990年代、ヴェネツィア。3人の男の名前が取り違えられたことから生じたトラブルを描いたドタバタ・コメディ。

別荘の買い付けにきたサラリーマンのオートン、殺し屋のロートン、デート・ツアーに参加したホートンが同じホテルに宿泊した。ところが、英語の苦手なベルボーイが3人の名前を取り違えて彼ら宛のメッセージをそれぞれ別の相手に渡してしまう。その結果、オートンは殺し屋が狙うマフィアの屋敷へ、ロートンはデートの相手との待ち合わせ場所へ、そしてホートンはリド島にある別荘へと、そうとは知らずに向かってしまう。

3人それぞれが、目的の相手とは違う相手と会うことになるのだが、それでも、最初のうちはつじつまが合ってしまうのがおかしい。間違いに気づいた後も、混乱は続き、結末までしっかりと笑わせてくれる。けして上質とはいえないが、気楽に楽しめるテンポよいコメディだ。

ストーリーの中で、とぼけたベルボーイが絶妙。

イタリア語を含むロマンス諸語では「H」の音を発音しないため、イタリア人には「H」の発音が苦手な人も多い。そんなことも、この取り違え劇の背景にはある。


ロケ地 / ヴェネツィア

  • サン・マルコ広場、ピアツェッタ、ため息の橋 … オープニング
  • ホテル・ダニエリ … 舞台となるホテル・ガブリエリ
  • 大運河・リアルト橋付近 … ホートンとキャロラインが食事をするレストラン。大運河に面しているレストランで食事をするキャロラインの背後にリアルト橋が見える。
  • コンタリーニ・デル・ボーヴォロ館 … オートンがマフィアたちに追いかけられるシーン。かたつむりの別名を持つ螺旋階段が使用されている。
  • リド島 … 別荘のある島 (ヴァポレットの停留所は Lido Sinicolo)

製作 / 1992 アメリカ [英語作品]
監督 / マーク・ハーマン

キャスト / メルヴィン・オートン… ダドリー・ムーア
マイク・ロートン (チャールトン・ブラック) … ブライアン・ブラウン
モーリス・ホートン … リチャード・グリフィス
キャロライン・ライト(ホートンとデートしてしまう不動産会社の女性) … パッツィ・ケンジット
パトリシア・フルフォード(ロートンに殺されそうになる、デート・ツアーに参加した女性)
             … ペネロープ・ウィルトン
ベルボーイ … ブロンソン・ピンチョット

媒体 / VIDEO,LD

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