CinemaItalia

INDEX > 作品紹介 ま-み

マイ・ワンダフル・ライフ / Chiedo asilo

1970年代、ボローニャ。 保育園の教師となったロベルトと周囲の人々との交流を描いた作品。

保育園の教師となったロベルトは持ち前のユーモアと明るさで園児たちの人気者となる。彼は課外指導員のルカと協力して、保育園にロバを連れてきたり、親が働く工場へ子供たちを連れていったり。親たちはロベルトが来てからの変化を歓迎していた。だが、口のきけないジャンルイジの拒食症はなおらなかった。そして、ロベルトがつきあっていたイザベラは妊娠し、故郷のサルデーニャで出産することになった。

淡々としたトーンとクローズアップを多用した映像が描き出すのは、いくつかのエピソードの不連続な羅列。後半の展開の伏線になるかと思われる映像も挿入されるが、後の話につながるわけでもなく、特に説明もない。ストーリーにも一貫性がなく、何かを求めて鑑賞すると消化不良を起こしそうである。

原題のChiedo asiloは、「(誰かに)保護を求める」という意。保護を求めていたのは、ジャンルイジか? そのジャンルイジを保護したロベルトもまた、求める側であったのではないか。そうすると、ラストは母胎回帰の表現なのだろうか。

イザベラの妊娠を知った女性が「ロンドンへ中絶しにいくの?」と尋ねる。基本的にカトリックの国では中絶は認められていなかった。簡単な手続きだけで中絶を認める中絶法がイタリアで成立したのは1978年である。

ベニーニが出演し、脚本も手がけているとはいえ、監督はベニーニではないので、彼の他の作品とはかなり趣きが異なる。「ロベルト・ベニーニのMr.モンスター」や「ナイト・オン・ザ・プラネット」に見られるようなベニーニを期待する向きには勧められない。


ロケ地 / ボローニャ

コルティチェッラ(corticella)地区[ボローニャの北6,7kmに位置する街]
Scuola materna p.e.e.p. bentini di Bologna (保育園)


製作 / 1979 イタリア
監督 / マルコ・フェレーリ
脚本 /
ロベルト・ベニーニ

キャスト / ロベルト … ロベルト・ベニーニ
イザベラ … ドミニク・ラフェ
ルカ … ルカ・レーヴィ 

媒体 / VIDEO

<Back ▲Top

マカロニ / Maccheroni

1980年代、ナポリ。商用でナポリを訪れたアメリカ人ロバートと、彼のかつての友人アントニオとの友情を描いた佳品。

航空機メーカーの副社長としてナポリを訪れたロバートの元へ、40年前彼のナポリ駐在中の友人だというアントニオが現われた。ロバートは、アントニオの周辺の人々が自分のことを知っているので不思議に思う。それは、ロバートと以前付き合っていた妹を慰めるためにアントニオが偽の手紙を書きつづけていたためだった。アントニオが作り出した自分の虚像に戸惑い、また抱えていた問題で気が滅入っていたロバートだが、ナポリの街に暮らす楽しさとアントニオの人柄にふれ、明るい気持ちになっていく。やがてそれは友情へと変化していくのだった。

仕事とは別に、カフェで大衆演劇の脚本を書き、役者が倒れれば代わりに舞台に上がってしまい、家族や親類に囲まれて暮らすアントニオ。生活に困らないだけの収入と、自分の楽しみと、愛すべき人たち。それだけあれば豊かな生活といえるのではないか。社会的地位も財産もあるが多忙な日々を送るロバートのそれは、けして豊かには見えない。

少年の頃の夢のような話に目を輝かせ、口の周りをクリームだらけにしてババにかぶりつく。だが、友人を助けるために走ることを厭わない。そんなふうに年を重ねられたら素敵だ。

名優、ジャック・レモンとマストロヤンニの顔合わせ。ナポリの風景だけでなく、ふたりの演技とそのおやじっぷりを堪能したい作品でもある。

アントニオの家族が食卓についたとき、彼は手を伸ばして倒れている人形を直す。この人形はプレゼピオと呼ばれるもので、キリスト生誕の場面を人形で表現した伝統的なクリスマスの飾り。イタリアでは元々クリスマス・ツリーを飾る習慣はなく、代わりにプレゼピオを飾る。

アントニオの息子が関わってしまう組織とはカモッラのこと。マフィアに相当するナポリの犯罪組織。

そして作品中印象的な場面で登場する食べ物が3つ。

一つ目はババ。ナポリが本場のお菓子で、スポンジケーキにラム酒を染み込ませたもの。映画ではこれに生クリームをのせる。孫もいるような年齢の男性が口の周りをクリームだらけにして食べる姿には笑ってしまうが、なんとおいしそうなのだろう。

二つ目は海岸の屋台で袋いっぱいに詰められたタラーリ。素朴な感じのドーナツ状の甘くない焼き菓子。

そして最後はもちろん、”マカロニ”である。


ロケ地 / ナポリ

  • ナポリ中央駅 … ロバートがナポリに到着するシーン
  • ホテル・エクセルシオール … ロバートが滞在するホテル
  • サンタ・キアラ教会・クラリッセの中庭 … ロバートが訪れる教会。クラリッセとは聖女キアラが創設したフランチェスコ会の女子修道会の修道女のこと。中庭を囲む列柱とベンチを飾るマヨルカ焼きの彩色陶板が美しい
  • Banco di Napoli 文書保管部 … アントニオの勤める会社
  • カステル・ヌオーヴォ … 街を歩くふたりの背景に見える
  • ウンベルト1世ガレリア … ふたりがババを食べるシーン(だが、中央部分にカフェはない)
    (情報提供 :
    niraさん)
  • リストランテ・ラ・ベルサリエーラ
  • ナポリ湾 … アントニオが生き返った話をするシーン、アントニオが組織の者たちと争うシーン
  • ナポリ空港 … ロバートがナポリを発つシーン

製作 / 1985 イタリア [英語・イタリア語作品]
監督 /
エットレ・スコーラ

キャスト / アントニオ … マルチェロ・マストロヤンニ
ロバート … ジャック・レモン

媒体 / VIDEO

<Back ▲Top

マレーナ / Male'na

1940年代、シチリア、カステルクト。結婚直後に夫を徴兵されてしまった若くて美しいマレーナ。そのマレーナに恋をした少年・レナートの目を通して見たマレーナの物語。

レナートが自転車を手に入れた日、海辺の通りで彼はマレーナを見かける。結婚直後に夫を徴兵された若くて美しいマレーナに心を奪われてしまったレナートは、マレーナの行き先へ自転車で先回りし、部屋を覗き、彼女の裸身を想像して自慰に耽ける。そんな遠くから見つめるだけの恋にも、戦局の変化同様、変化が訪れる。夫が戦死し、身を落としていくマレーナを見守りつづけるレナート。彼女を守りたいと思う少年の気持ちはマレーナを救えるのだろうか。

レナートが自転車で駆け抜けるリズム感が気持ちいい映画。マレーナ自身のセリフは少なく、あくまでも視点は「レナートから見た」マレーナである。実際のマレーナとレナートの接触はほとんどない。そして、虚像に恋する若き日の話で終わらないところがこの作品の深いところ。誰もが経験するような少年期の恋の物語であると同時に、ひとりの女性を追いつめていく戦争の物語でもある。

美しく魅力的であるということが、”異”であるという理由で、村の人々はマレーナに好奇の視線を向け、つらくあたり、悪い噂を立てる。戦時中の不満がスケープゴートを欲し、その行動を正当化させる。間接的に戦争がマレーナを追いつめていく怖さ。

一方、恋心があったがゆえに結果として一番客観的な傍観者となったレナート。その行き過ぎた行動でさえも、良い結果を生むことになったのは、マレーナを思う一途で純粋な気持ちがあったからなのだろう。

そしてひとつの恋は想い出に変わり、少年は少しだけ大人になる。つらいシーンもあるのだが、見終わった後には爽やかな気持ちになれる作品である。

気になるのはマレーナのほんとうの気持ち。彼女自身の口から語られるセリフがほとんどないので、村の人々の視線をどう感じていたのか、レナートの行動に気づいていなかったのか、どんな気持ちで”仕事”を始めたのか、ずっと夫だけを思い続けていたのか、その答えは彼女自身しか知らない。

「愛する(amoroso)」という名のレナートと、「マグダラのマリア(Maria Maddalena:マレーナはマッダレーナの通称)」と同じ名前のマレーナ。名前にも役を象徴する意味を持たせているようだ。

村に戻ったマレーナに一転して優しく接する女たち。それは、平和になったからとか、過去の仕打ちを後ろめたく思ったからというだけではなく、マレーナの変化が一番の原因なのだろう。かつての匂い立つような色香が消え、地味な装いをする彼女に、嫉妬する気持ちが起こらなくなったからなのではないか。

そんなマレーナの変化を表象するような衣装にも注目したい。


ロケ地 / シラクサ、ノート、モロッコ

  • シラクサ
  • オルティージャ島、ドゥオーモ広場 … レナートがマレーナを見かける広場(作中何度も登場する)

カステルクトは架空の街


製作 / 2000 イタリア・アメリカ
監督 /
ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽 /
エンニオ・モリコーネ

キャスト / マレーナ … モニカ・ベルッチ
レナート … ジュゼッペ・スルファーロ
媒体 / VIDEO,DVD  (限定発売されたディレクターズ・エディションには、『ジュゼッペ・トルナトーレのシチリアで見た夢』が特典として収録されている)
ノベライズ / ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ『マレーナ』 角川文庫 田中 粒【訳】
サウンドトラック / マレーナ

Gallery
Official site
Official site (英語)
Official site (イタリア語)

 マレーナ [DVD]

<Back ▲Top

魅せられて / Stealing Beauty

1990年代 トスカーナ、ブロリオ。少女が大人へと変化していく、ひと夏の出来事。19歳のアメリカ人ルーシーは、母の死後、夏休みにイタリアを訪れる。そこは、母の思い出の地であると同時に、彼女自身の初恋の思い出と結びついた地であった。

母の知人の彫刻家夫妻の家に滞在しながら、ルーシーは彼女の本当の父親を探そうとする。母の書き残した詩が唯一の手がかりである。そして、彼女がもうひとつ期待していたもの、それは4年前にキスをした初恋の相手に再び会うことであった。

父親のこと、自分のこと、不安定な気持ちをルーシーは死期も近いアレックスに相談する。

のどかなトスカーナの田舎で少女と女の間を揺れ動くルーシー。アレックスの存在が、ルーシーの内面の動きを描出するのに一役買っている。これにより、単なる”ロスト・ヴァージン”のストーリーではなくなっているといえよう。

出生の秘密と初恋のゆくえという二つのテーマのため焦点が少々ぼやけ気味ではあるが、美しいトスカーナの風景に救われた感がある。


ロケ地 / ブロリオ、シエナ

  • ブロリオは、ワインで知られるキャンティ地方の街。
  • ラストで上空から見るシエナの街が映る。
    ドゥオーモを始め、カンポ広場、マンジャの塔などが見える。

製作 / 1996 イタリア [英語作品]
監督 /
ベルナルド・ベルトルッチ
キャスト / ルーシー … リヴ・タイラー
アレックス … ジェレミー・アイアンズ
イアン … ドナル・マッケイン

媒体 / VIDEO,LD,DVD
サウンドトラック / Stealing Beauty (アメリカ盤)

魅せられて

<Back ▲Top

魅せられて四月 / Enchanted April

1920年代 ロンドン、ポルトフィーノ。「イタリアの別荘を一月貸します」−−新聞広告がきっかけで、それまで親しい付き合いのあったわけではない女性4人が、ポルトフィーノにある別荘を借りて、一月一緒に過ごすことになる。それぞれ、階級も暮らし向きも境遇も異なる4人だが、共通しているのは「日常のわずらわしさ、ロンドンの陰鬱さから逃げ出したかった」という気持ち。のんびりと、イタリアでの休日をすごすうちに、それぞれの中に少しずつではあるが変化が生じる。

逃げ出したいとまで思ったわずらわしいことが、なければないで寂しいと感じる。逆に、お気に入りで身の回りに絶えず置いてあったものを、もううんざりと感じる。そんな気持ちが出る、4人の女性のモノローグがおもしろい。

陰のイギリスと陽のイタリア。こんな対比がされるのは、イギリスの憧れの表われかもしれない。

本筋からはそれるが、ストーリー中にでてくる夾竹桃のエピソードがsweet。 (ビデオ中の字幕で「夾竹桃」のルビが間違っているのはご愛嬌)


ロケ地 / ポルトフィーノ、イギリス

ポルトフィーノはジェノバから1時間ほどの海辺の別荘地。


製作 / 1992 イギリス [英語作品]
監督 / マイク・ニューウェル

キャスト / ロティ … ジョシー・ローレンス
ローズ … ミランダ・リチャードソン
Mrs.フィッシャー … ジョーン・プロウライト
キャロライン …
ポリー・ウォーカー
原作 / エリザベス・フォン・アーニム 『魅せられて四月』 扶桑社 北条 元子【訳】
媒体 / VIDEO,DVD
cover

<Back ▲Top

みんな元気 / Stanno tutti bene

1980年代、シチリア、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、リミニ、ミラノ、トリノ。普段は離れて暮らしている子供たちを、父親が訪ね歩くロードムービー。

家庭を持ったり、独立したりして、イタリアの各地に暮らす5人の子供たち。夏休みには、シチリアのマッテオのもとを訪れるはずだったのに、誰一人として訪ねて来なかった。「みんな仕事が忙しいのさ」と、これをきっかけにマッテオは、子供たちの家を訪ね歩くことにする。

みんな幸せに暮らして、仕事も成功して、と信じていたのだが、現実はそうでもないことを知る。シングル・マザーになっていた娘、思うように出世していない息子。親に不要な心配をかけまいと、また、親が期待するようなこどもでありたいと、幸せそうな家族・出世した自分を演じていた子供たちと、事実を知らされなかったことに気づいた時の親の落胆。

親子だからこそ、正直でいてほしいと思い、また、親子だからこそ、知らせたくないと思う。その相容れぬ思いのバランスはいつでも危うい。どちらの気持ちもわかるだけに、こうするべき、という答えがみつからない。子供は自分が親になった時に、自分の親と同じ思いをし、また、その子供もと、繰り返すことなのかもしれない。

旅を終えて、マッテオは”妻”に報告する。「ああ、いい旅だった。みんな元気だったよ」

ローマの息子のアパートに物々しい警備。身分証明を求められて「シチリア人だな。」と睨まれるマッテオ。どうやら、マフィア関係の裁判を担当する判事が同じアパートで暮らしているらしい。

雑然とした感じの否めない南の街・ナポリと、整然とした感じの北の街・ミラノ。そんな街の横顔の違いも見えてくる。


ロケ地 / シチリア(メッシーナ)、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、リミニ、ミラノ、トリノ

ナポリ

  • ナポリ大
  • ガレリア・ウンベルト1世

フィレンツェ

  • サンタクローチェ教会 … トスカのアパートの窓から見える教会
  • 孤児養育院(背景にドゥオーモが見える) … トスカが撮影しているシーン

リミニ … アドリア海に面したリゾート地

  • マッテオが列車で出会った女性と訪れる海岸

ミラノ

  • ドゥオーモ
  • スカラ座(内部も見られる) … マッテオがグリエルモを探しに行くシーン
  • Burghy(ハンバーガーショップ) … マッテオとグリエルモの息子が食事するシーン

製作 / 1990 イタリア
監督 /
ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽 /
エンニオ・モリコーネ

キャスト / マッテオ … マルチェロ・マストロヤンニ
アルヴァーロ (子供時代) …
サルヴァトーレ・カシオ
カニオ … マリノ・チェンナ
トスカ … ヴァレリア・カヴァリ
ノルマ … ノルマ・マルテッリ
グリエルモ … ロベルト・ノービレ
列車で会う女性 … ミシェル・モルガン
指揮者 …
エンニオ・モリコーネ

媒体 / VIDEO

<Back ▲Top

Copyright (c) 1999-2003 Kimichi All Rights Reserved