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息子の部屋 / La stanza del figlio

2000年、アンコーナ。精神分析医であるジョヴァンニの家族。事故が元で崩壊した家族関係の再生を描いた作品。

ジョヴァンニは妻とふたりの子どもと穏やかに暮らしていたが、ある日事故で息子を失ってしまう。それまでは、お互いを理解しあっていると思っていたのだが、気持ちのすれ違いが生じ、実はお互いのことをよく知っていたわけではないことに気づく。崩れた家族の関係はどのように再生していくのか。

家族という近い関係だから、誰よりもお互いをよく知っているというわけではない。むしろ、その関係の近さに甘えて、相手を知ろうという努力をしなくなっていたり、自分のことを相手に話さなくなっていたりしないか。

ジョヴァンニは失ってはじめて息子・アンドレアについて知らない点が多かったことに気づく。息子にガール・フレンドがいたことがわかったとき、家族の「特別なことじゃないから話さなかっただけじゃない?」ということばに「じゃあ、特別なことは話したか?」と聞き返す。このセリフがなんとも痛々しい。精神分析医でありながら、どうして息子の心情の細かな部分に思いが至らなかったのか、なぜ自分のことを話さない息子だったことに気づかなかったのか、なぜ自分から息子に話しかけることができなかったのか。そんな後悔と自責の気持ちが集約されているようだ。

「おやすみ」とベッドルームを出て行くジョヴァンニ。見かけは日常に戻ったかのような家族・夫婦だが、実はそうではないというのが見えるシーン。イレーネの心情を表現するかのようなバスケのシーン。間接的な表現が良い。男親と女親の行動・心情の変化の違いや、家族とガール・フレンドの”事故”の消化のしかたの違いの描き方も細やか。

バラバラになってしまう家族、周囲から期待されるモレッティの役割など「ジュリオの当惑」と共通するモチーフが見られるが、「ジュリオ」ほど極端な描写ではなくなった。靴をたくさん持っているなど端々に、モレッティっぽさを感じる表現がでてくるが、全体的にはモレッティの”あくの強さ”は和らいだ感じの作品なので、モレッティ好きには評価の分かれるところ。逆にこの作品が初めてのモレッティという人にはおすすめ。

モレッティ自身の個人的な経験からは離れた、というこの作品。今後の作品によっては、本作が過渡期の作品ということになるのかもしれない。

ストーリーとは関係ないが、棺桶の蓋のデザインは生まれた日によって違い、しかも金属製の中蓋(?)があって、それをはんだ付けするらしい。(カトリックの国だけか?)それぞれの日に守護聖人が決められているからなのだろうとか、過去にヨーロッパで流行した病気のせいで習慣として残ったのだろうなどと、想像するが実際のところはどうなのだろう?


ロケ地 / アンコーナ、フランス(マントン)


製作 / 2001 イタリア・フランス
監督 /
ナンニ・モレッティ

キャスト / ジョヴァンニ … ナンニ・モレッティ
パオラ … ラウラ・モランテ
アンドレア … ジュゼッペ・サンフェリーチェ
イレーネ … ジャスミン・トリンカ

トマソ(患者) … ステファノ・アッコルシ 
媒体 / VIDEO, DVD (DVDには特典映像としてショートフィルム「『クローズ・アップ』の初日(Il giorno della prima di close up)」が収録されている)

サウンドトラック / 息子の部屋
            … 作品中、印象的に使用されている2曲(By This River、
            Insieme a te non ci sto piu)はサントラに収録されていない。
            それぞれの曲はこちらで→Before & After Science
                          Il Volto Della Vit

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ムッソリーニとお茶を / Tea with Mussolini

1935−45年、フィレンツェ、サン・ジミニャーノ。戦時下のイタリアで孤独な少年ルカを育てた英米の女性たち。

母親を失ったルカを引き取ることにしたメアリー。事情を知った他のイギリス・アメリカの女性たちは、直接的・間接的にメアリーに協力し、皆でルカを”英国紳士”に育てていくことにした。国籍や立場、生活スタイルの違う5人の女性はルカを通して結びつくことになる。10年後、戦局は変化しイギリス・アメリカとイタリアは敵同士となる。だが、ルカは彼女たちのために奔走し、そしてユダヤ系であるエルサの命を救うことになる。

ストーリーはいたってシンプルだが、ルカを取り巻く5人の女性たちの個性が強烈。特にシェール演ずるエルサが魅力的。自由奔放に生きているようでいながら、その一方で、ルカ、ユダヤ系の同胞たち、そしてけして仲良くはなかったレディ・へスターらイギリス人たちへ手を差し伸べ、彼女の財力で問題を解決していく。

イタリアに暮らす彼女たちにとって、母国とイタリアは敵同士である。だが、愛すべき芸術に国籍も戦争も関係ない。自分の身の安全も危うい戦時下において、敵となった国の芸術を守るべく体を張る彼女たちには感動を覚える。

トスカーナの風景、フィレンツェの街並み。映像もたっぷり楽しみたい。

ウフィッツィ美術館で展示されている絵画を前にアフタヌーン・ティーを楽しむ(!)メアリーたち。イタリア兵は「今日から規則が変わった」と、食器類を窓から投げ捨てる。かつて、不要品を窓から捨てる習慣があったというが、この当時でもそうだったのだろうか。

強制収容されていてもアフタヌーン・ティーの習慣を崩さないイギリス人。”お茶の用意は4時きっかりにね。4時15分とかではなく、4時よ”と念を押す。また、入手し損ねたピカソの絵を巡って”「約束します」って、それはイタリア流の約束?それともアメリカの?”と詰め寄るエルサ。イタリア人はいい加減だと思われているという描写だが、イタリア人監督の作品であることを考えると、彼ら自身もそう思っているのかもしれない。

余談だが、作品中アラベラが飼っている犬・ニッキーはゼフィレッリの飼い犬だそうだ。


ロケ地 / フィレンツェ、フィエーゾレ、サン・ジミニャーノ

フィレンツェ

  • イギリス人墓地
  • ドゥオーモ
  • ジョットの鐘楼
  • 孤児養育院 … ルカを施設に連れ戻すシーン
  • ノヴェッラ広場 … ルカの学校のシーン
  • ベッキオ橋
  • アルノ川
  • ウフィッツィ美術館 … アフタヌーン・ティーのシーン
  • シニョーリア広場
  • フィレンツェSMN駅

フィエーゾレ

  • エトルリア時代の遺跡 … エルサとジョージーの再会のシーン

サン・ジミニャーノ

  • ドゥオーモ(サンタ・フィーナ礼拝堂) … フレスコ画の修復のシーン
    (アラベラが土嚢を積んで保護しようとした絵はドメニコ・ギルランダイオの「聖女フィーナの葬儀
    参考:
    Web Gallery of Art

製作 / 1998 イタリア・イギリス [英語作品(イタリア語部分あり)]
監督 /
フランコ・ゼフィレッリ

キャスト / ルカ(10代) … ベアード・ウォレス
メアリー … ジョーン・プロウライト
エルサ … シェール
レディ・ヘスター … マギー・スミス
アラベラ … ジュディ・デンチ
ジョージー … リリー・トムリン
媒体 / VIDEO,DVD
サウンドトラック / Tea With Mussolini (アメリカ盤)

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(英語)

 ムッソリーニとお茶を 【ベスト・ライブラリー 1500円:第5弾】 [DVD]

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無防備都市 / Roma, citta' aperta

1940年代前半、ローマ。第二次大戦末期、ドイツ軍占領下のローマの光景とドイツ軍に抵抗する人々。”ネオ・レアリズモ”と呼ばれる映画の中の1本であり、現実をそのままに描くノン・フィクションに近いストーリー。もともと記録映画として製作を始め、途中から劇映画に変更されたという経緯のため、記録映画的色彩が強い。「戦火のかなた」「ドイツ零年」と並び、ロッセリーニの戦後3部作の1本。

第二次大戦は終局に近づいていたが、ローマに暮らす人々は、一般の市民でさえも、なんらかの形で戦争と背中合わせで生きていた。レジスタンスの活動を続けるフランチェスコと、そうとは知らずに彼と接するピーナ。表向きは神父だが、それを利用し活動に協力するドン・ピエトロ神父。母にも知らせず、影でゲリラ的な活動をする子供たち。

事実に即した話だけに、それぞれの話が現実味を帯びている。強く印象に残るのは、ナチスに捉えられた婚約者を追って、射殺されるピーナ。

自分の素性を隠しているため、ピーナの妹に、彼女の姉の死を告げられないフランチェスコの歪んだ表情。そして、ラスト、丘の上からサン・ピエトロ大聖堂を眺める子供たちである。こういった現実をスクリーン越しにしか知らない世代にも、悲痛な思いが伝わってくる。

なお、ピーナとドン・ピエトロ神父にはモデルとなった人物がいる。ピーナのモデルとなった女性は、テレーザ・グッチェーラ。ゲシュタポに捕らえられ、ジュリオ・チェザーレ通りの兵舎に収容されている夫に駆け寄ったところを射殺されたという。ドン・ピエトロ神父のモデルは、パルチザンに協力したことを理由にナチスに処刑されたドン・ジュゼッペ・モロシーニ神父である。

余談だが、この映画に感激したイングリッド・バーグマンが、ロッセリーニに手紙を送り(彼女が唯一知っていたイタリア語”Ti amo”を書き添えて)、それが元で二人が結ばれたという話は有名。


ロケ地 / ローマ

全てローマでのロケだが、モニュメントや観光客が訪れるような場所はほとんど登場しない。わずかに、サン・ピエトロ大聖堂のドームが映るぐらいである。

この映画の撮影時には、たとえ撮影所を使いたくても、Cinecitta' は避難民の収容所となっており、使用できなかったという。


製作 / 1945 イタリア
監督 /
ロベルト・ロッセリーニ
脚本 /
フェデリコ・フェリーニ
キャスト / ピーナ … アンナ・マニャーニ
フランチェスコ … フランチェスコ・グランジャケット
マンフレーディ … マルチェッロ・パリエーロ
ドン・ピエトロ神父 … アルド・ファブリーツィ

媒体 / VIDEO, LD, DVD

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