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情事 / L'avventura

1950〜60年代、ローマ、 エオリア諸島、ノート、メッシーナ、パレルモ、タオルミーナ、ほか。 失踪した友人を探すうちに、友人の恋人と深い関係になってしまうクラウディア。愛情と同時にクラウディアの心に芽生える不安。 アントニオーニの「夜」「太陽はひとりぼっち」へと続く愛の不毛3部作の第1作。

ローマに暮らすアンナとクラウディアは、グループでシチリア旅行へと向かったが、着いた矢先にアンナが姿を消してしまった。クラウディアとアンナの恋人・サンドロのふたりでアンナの行方を追うことになり、メッシーナ、ノ ート、タオルミーナと探し続けるが、アンナはみつからない。アンナはなぜ失踪したのか? 失踪したアンナは生きているのか? 生きているとしたらどこに?

客観的には満ち足りた女性・アンナの失踪というミステリのような展開に目を奪われがちであるが、実はストーリーの焦点はアンナの動向ではなく、クラウディアの心情。

ローマにいたときにはアンナが抱える不満/不安を理解できなかったのに、サンドロの愛情を手にしたとき、おそらくアンナが抱えていたであろう不安を自分もまた抱え込んでしまったことに気づくクラウディア。そして、アンナが無事に見つかることを願うと同時に、見つかることを恐れるという相容れないふたつの感情を抱え込む。 アントニオーニ作品の代名詞「愛の不毛」が、この作品でも描かれている。

自分の感情を咀嚼しきれない不安定さを、どこか虚ろな表情のモニカ・ヴィッティが好演。

ラストでクラウディアの感じた不安がひとつ、現実のものとな る。サン・ドメニコ・パレスの人気(ひとけ)のないホールや廊下が、実際以上に広く感じられ、 陰鬱で寂しげな印象を抱かせるのは、モノクロ作品のせいだけではなく、その空虚さがクラウディアの心情を投影しているからではないだろうか。

本文中の画像は掲載の許可を受けております。転載はご遠慮ください。


ロケ地 / ローマ、 エオリア諸島、ノート、メッシーナ、パレルモ、モンデッロ、ミラッツォ、バゲリーア、タオルミーナ

ローマ

エオリア諸島

  • リスカ・ビアンカ島 … アンナが姿を消す無人島
  • パナレア島 … クルージングで訪れる島

ノート

  • ドゥオーモの屋上 … サンドロが将来について話すシーン

メッシーナ

  • アメリカ人作家に群がる群衆のシーン

パレルモ

  • Villa Niscemi … 公爵夫人の館?

モンデッロ

ミラッツォ

  • 警察署のシーン

バゲリーア

  • パラゴニア荘

タオルミーナ


製作 / 1960 イタリア
監督 / ミケランジェロ・アントニオーニ
キャスト / クラウディア … モニカ・ヴィッティ
サンドロ … ガブリエル・フェルゼッティ
アンナ … レア・マッセリ

媒体 / DVD

情事

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娼婦ベロニカ / A destiny of her own

1583年ヴェネツィア。女性が男性の所有物として扱われていた時代。詩人であり、高級娼婦であったベロニカの半生。当時実在したベロニカ・フランコ本人がこの作品のモデルである。

ベロニカは古い家柄の娘であったが、身分違いであることを理由に、恋人である貴族のマルコと結婚できない。ふさぎこむベロニカにひとつだけマルコを手に入れる方法があると、母がささやく。その方法とは高級娼婦になること。かつて高級娼婦だった母のてほどきを受け、ベロニカはコーティザン(高級娼婦)としての道を歩む。地位も高く権力もある男達からの予約がひっきりなしに舞い込むようになると、マルコも気が気ではない。そしてベロニカの存在は政治的にも影響力を及ぼすようになる。

高級娼婦とは普通の娼婦とは違った特殊な存在。身分の高い男性達を相手にするため、容姿やベッドでのテクニックはもちろんのこと、優雅な身のこなしや高い教養が要求される。娼婦としての役割の部分を除けば、レディであることが要求されるのだ。また、それゆえに、男性社会において一目置かれる存在にもなりうる。

好きな相手とは結ばれない、悲恋のストーリーとして見てしまえば、他愛もない話。だが、女性が当時どのような存在であったかを考えさせられるストーリーでもある。当時の社会においては、ベロニカのような生き方は、女性が自立して自由に生きるための手段であったのは、違いない。だが、彼女の立場は結局のところ、周囲の男性たちの権力や地位によって保証されるもの。政略結婚させられた女性たちとの差は、映画で強調されているほどは大きくなかったのではないだろうか?あの時代に生きた女性の悲しさを感じずにはいられない。

ベロニカのセクシーさを際立たせるような衣装・アクセサリーも見ごたえあり。


ロケ地 / ローマ 他

  • ストーリーの大部分の舞台はヴェネツィアだが、運河を含むこの風景のほとんどは、ローマのチネチッタ・スタジオ内のセットによる撮影。
  • オルシーニ・オデサルチ城/ブラッチアーノ、
  • ヴィラ・アルドブランディーニ/フラスカティ … ベロニカとマフィオの決闘シーン

製作 / 1998 アメリカ [英語作品]
監督 / マーシャル・ハースコビッツ

キャスト / ベロニカ … キャサリーン・マコーマック
マルコ … ルーファス・シーウェル
マフィオ … オリバー・プラット
パオラ(ベロニカの母) … ジャクリーン・ビセット
原作 / マーガレット・ローゼンタール … 「The Honest Courtesan: Veronica Franco, Citizen and Writer in Sixteenth-Century Venice」 (自伝)
媒体 / VIDEO、
DVD
サウンドトラック / Dangerous Beauty (イギリス盤)

Gallery
Official site
 (フォックスジャパン)

娼婦ベロニカ

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ジョニーの事情 / Johnny stecchino

1980年代、シチリア。マフィアのジョニーと瓜二つだったが為に命を狙われるダンテ。

パーティーではみんなに相手にされず、仕事はスクールバスの運転手、自動車事故の虚偽申告で降りる保険金を生活費の足しにする、ダンテはどうひいき目に見てもさえない男。ところが、偶然街であったマリアは、彼の顔をうっとり見つめ「信じられない」とつぶやいて、彼女の住むパレルモへダンテを招待する。実はマリアのダンナは、敵対するファミリーから命を狙われるマフィアのジョニー。いつも楊枝を口にしているから、ジョニー・ステッキーノ(楊枝のジョニー)。ジョニーそっくりのダンテをダンナの身代わりにして、ダンナを助けようという計画だ。そうとは知らずに、平然と街を散歩するダンテを銃弾が襲う。

ダンテの不幸を笑うコメディかと思えば、そのダンテもなかなか巧妙に立ち回る。二役をこなすベニーニが絶妙だが、マフィアの役には、線が細く凄みが足りない感じは否めない。

そして、最後に笑うのは……。しかし、女というのは、なんてしたたかな生き物なんだろう。

ところで、ベニーニって実は、「紋○郎」を見たことあるんじゃないだろうか? と思ったが、どうだろう。


ロケ地 / シチリア


製作 / 1992 イタリア
監督 /
ロベルト・ベニーニ

キャスト / ジョニー、 ダンテ (2役) … ロベルト・ベニーニ
マリア …
ニコレッタ・ブラスキ

媒体 / VIDEO

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ジョヴァンニ  Il mestiere delle armi

1526年11月24日から11月30日までの6日間。マントヴァ、ポー河近郊。”黒隊のジョヴァンニ”と怖れられたジョヴァンニ・デ・メディチとドイツ軍との戦いを巡る政治的策略。

教皇側の軍隊を率いるジョヴァンニは、神聖ローマ帝国皇帝側の軍隊に迫っていた。 マントヴァ侯、フェデリコ・ゴンザーガはジョヴァンニと縁続きであり、表向きは教皇側であったが、領土内での戦争を回避したいと考えていた。また、フェラーラ公、アルフォンソ・デステも皇帝との結びつきを強化しようと画策していた。それぞれの思惑が、ジョヴァンニにもたらすものとは?

史実を淡々と追っていくストーリーであるため、スクリーンを通して寒さと痛みが切々と伝わってくる(偶然、鑑賞した年(2004年)の暦と、劇中(1526年)の暦とが一致していたため、スクリーンの中のものが、より強く伝わってきたような気がする)。映像自体はその内容に反してしっとりと穏やか。特にジョヴァンニの妻からの手紙のシーンは、フェルメールの絵画を彷彿させる、飾り気のない穏やかさである。

武将としてのジョヴァンニは、敵味方を問わず、その強さを認められていたが、彼の周囲/各国の領主たちは、ジョヴァンニとは違った理論で動いていた。向き合って剣を交えるだけの戦いばかりではなくなっていることに、ジョヴァンニは思い及ばない。

当時のイタリアは、現在のような統一国家ではなく、小国が群雄割拠していた時代である。ヴァチカンとドイツとの戦争が自国の領土内で勃発しては困るという考えも、大国寄りの決断をする姿勢も、攻められたことではない。 だが、マントヴァ侯、フェラーラ公が、少しずつ皇帝軍に便宜を図ったため、結果的にジョヴァンニは退却を余儀なくされてしまうのだ。ジョヴァンニの運命を決めたのは、このふたりの行動と彼自身の気性だったと言えよう。誰かが悪いのではなく、誰もが少しずつ道を誤ったのだ。

"マントヴァの貴婦人"が流れに逆らって馬車を進めていくさまは、「夏の嵐」でフランツを追うリヴィアを思い起こさせる。しかし、途中で挿入されるふたりの逢瀬は、さほど重要な意味をなしてはいないように思う。母・カテリーナ・スフォルツァの美貌を受け継ぎ、"色を好んだ"英雄のエピソードということだろうか。

重火器が戦争に用いられるようになり、相手の顔も名も知らぬ間に一度に大勢を殺せるようになった。 ジョヴァンニの時代から500年弱。ラストのことばが虚しく響くような現代になってしまったことを、残念に思う。


ロケ地 / マントヴァ、フェラーラ、ソンチーノ、トッレ・パッラヴィチーナ、ブルガリア

マントヴァ

  • サン・タンドレア教会…冒頭とラストのシーン。
  • パラッツォ・ドゥカーレ

フェラーラ

  • カステッロ・エステンセ

ソンチーノ

  • ロッカ・ディ・ソンチーノ

トッレ・パッラヴィチーナ


製作 / 2000 イタリア
監督 / エルマンノ・オルミ
キャスト / ジョヴァンニ・デ・メディチ … クリスト・ジフコフ
フェデリコ・ゴンザーガ … セルジョ・グランマティコ

マントヴァの貴婦人…サンドラ・チェッカレッリ
ジョヴァンニの妻・マリア(豪華王ロレンツォの孫にあたる)
           …デシィ・テネケディエヴァ

媒体 /

Official site

 

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親愛なる日記 / Caro diario

1990年代、ローマ、エオリア諸島。映画監督であり俳優であるモレッティの日常を、3つのストーリーで構成する日記風の作品。

[ヴェスパにのって]8月。人々はヴァカンスに出かけ、閑散としたローマをモレッティがヴェスパで駆け抜ける。住宅街の家を見るのを楽しみ、憧れのジェニファー・ビールスに出会う。そして、新聞記事をきっかけに、思い出したようにパゾリーニの遺体発見現場であるオスティア海岸へとヴェスパを走らせるのだった。

[島めぐり]次回作の脚本を書き上げるために、リパリ島に住む友人・ジェラルドを訪ねる。だがリパリはうるさすぎて仕事にならず、サリーナ、ストロンボリ、パナレーア、アリクーディ、と島を巡るが、どこも一長一短、結局仕事は一向にすすまない。

[医者めぐり]ひどい痒みに悩まされるようになったモレッティは、医者に診察してもらうが良くならない。違う医者にかかるたびに、違った診断が下され、違った薬を処方される。様々な治療を試み、検査を受ける。検査結果は肺ガンだった。(実体験をもとにしているそうだ)

前作までのモレッティの分身”ミケーレ”ではなく、モレッティ自身として日々の行動を語る口調は、相変わらず淡々としている。日記という形を借りて展開されているのは、かなりデフォルメされているのではないかと思われるイタリアの姿だ。「8月には映画館さえ休み」でおもしろそうな映画が上映されていないローマ。甘やかされて育った一人っ子が多く、電話に出た子どもがなかなか親に取り次いでくれないため「電話連絡は不可能だ」というサリーナ島。「30年一切テレビを見なかった」反動で、ドラマの続きが気になってしかたがないジェラルド。もっともらしく様々な薬を処方する医者たち。モレッティお得意の皮肉が小気味良い。これらの問題はイタリアに限ったことではないが、イタリア人はこの映画を見て苦笑するだけでは済まないのかもしれない。

リパリのバールでモレッティが注文するオレンジ・ジュースは真っ赤な色。最近は日本でもお目にかかるようになったが、シチリア産のオレンジは果肉が赤く、ジュース用として人気がある。同じ店で友人が注文していたのはグラニータ。シャーベットとかき氷の中間のようなもの。

ストロンボリ島の村長が名前を挙げるモリコーネストラーロ。モリコーネは映画音楽を手がける作曲家で、多作な彼の映画音楽は日本のテレビ番組でも度々BGMに使用されている。一方ストラーロは美しい映像を撮るカメラマン。ベルトルッチの数々の名作を撮ったのが彼である。イタリア映画界を担う映画人のうちのふたりである。

本作はストラーロの撮影ではないが、ヴェスパにまたがるモレッティの後ろを追うカメラワークは、自分がローマの街でヴェスパを走らせているような感覚になって楽しい。モレッティの後ろについてローマの街を走ろう!


ロケ地 / ローマ、エオリア諸島(リパリ、サリーナ、ストロンボリ、パナレーア、アリクーディ)

ローマ

  • ガルバテッラ地区 … モレッティがヴェスパで走る住宅地のひとつ。ローマの南、EURに近い地域で「特別な一日」で描かれた集合住宅同様、ファシストの政策によって建設された低所得者層向けの住宅地。
  • オスティア海岸(イドロスカロ) … 白いオブジェは、映画監督パゾリーニの遺体が発見された現場に建てられたもの。少年に殺害されたとされるパゾリーニだが、その死については不明な点も多いらしい。

エオリア諸島

  • リパリ … 渋滞がひどくて仕事にならない
  • サリーナ … 一人っ子ばかりの島。電話連絡ができない
  • ストロンボリ … 火山の島。仕事のメモが原因でけんかになる
  • パナレーア … 変わった人に会い、上陸直後に船に引き返す
  • アリクーディ … 自然が残る島。電気がないのでテレビが見られない

製作 / 1993 イタリア・フランス
監督 /
ナンニ・モレッティ
キャスト / モレッティ … ナンニ・モレッティ
ジェラルド … レナート・カルペンティエーリ

媒体 / DVD

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ジンジャーとフレッド / Ginger e Fred

1980年代、ローマ。かつてフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースを模して人気のあったコンビの二人が「あの人は今?」風のテレビ番組の企画で何十年かぶりに再会する。過去の栄光は過去のものでしかないことを知ると同時に、二人が離れていた時間は、等しく同じだったのではないことにも気づく。

以前は、ピッタリと息が合っていたはずなのに、ダンスも会話も、今はなんとなくちぐはぐな感じが否めないことを感じるアメリア。再会後の数時間の間に、コンビ解消後に自分が過ごした年月とピッポが過ごした年月は、時の長さは等しくても、まったく違うものだったことに気づいていく。親しい仲だったはずなのに、知らなかったこと、知らせなかったこと。テレビ番組の安っぽい作りを批判しつつ、物語は進んでゆく。

確かにイタリア映画なのだが、このストーリーはどこの国であっても成り立つもの。普遍的であるということは、逆にイタリアらしさに欠けるということになってしまうか?


ロケ地 / ローマ

ほとんどが、セット内の撮影ではないかと思われる。


製作 / 1985 イタリア・フランス・西ドイツ
監督 /
フェデリコ・フェリーニ
キャスト / アメリア(ジンジャー) … ジュリエッタ・マシーナ
ピッポ(フレッド) …
マルチェロ・マストロヤンニ

媒体 / VIDEO,LD, DVD

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青春のくずや〜おはらい / Ecce bombo

1970年代、ローマ。大学生ミケーレと仲間、家族、教師それぞれの憂鬱。小さなモチーフの積み重ねでストーリーは進む。

単なる、「シニカルなコメディ」なのか、その奥にあるものを感じるか?
(正直にいうと、一度見ただけでは、モレッティが何を伝えたかったのか、よくわからなかった。)

ただ、当時の「等身大のローマ」−−−観光地としてでもなく、歴史的遺産の残る街としてでもなく−−−の一面を見ることができるだろう。


ロケ地 / ローマ、オスティア海岸


製作 / 1978 イタリア
監督 /
ナンニ・モレッティ

キャスト / ミケーレ … ナンニ・モレッティ
ミルコ … ファビオ・トラヴェルサ
オルガ … リナ・サストリ

媒体 / 残念ながらVIDEO等は現在未発売。劇場公開も最終上映を終えました。

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世界中がアイ・ラヴ・ユー / Everyone says I love you

1990年代、ニューヨーク、ヴェネツィア、パリ。ニューヨークに暮らす家族のそれぞれの出会い、愛、別れを描く。

妻とは離婚して、現在はパリに暮らすジョーだが、元妻のステフィの家族とは友人としてのつきあいが続いている。ステフィの家族はといえば、お互いが2回目の結婚で、それぞれに連れ子がいる。ストーリーは、ジョーとステフィの娘、ジューナのナレーションとミュージカル仕立ての歌で進行する。夏休みを父親と過ごすことにしているジューナは、父とヴェネツィアを訪れる。恋多きパパのために協力するジューナ。

本当の愛とは自分で努力してこそ、手に入るもの。そんなあたりまえのことを、思い出させてくれる。

ヴェネツィアを愛するアレンは、96年に内部焼失してしまったフェニーチェ劇場再建のため、この映画をチャリティ上映に提供した。

ジューナが注文する"ベリーニ"は、ヴェネツィアのハリーズ・バー発祥のワインベースのカクテル。

スパークリングワイン 90ml
ピーチネクター 30ml
グレナデンシロップ 1滴

上のレシピでお試しあれ。


ロケ地 / ヴェネツィア、ニューヨーク、パリ

ヴェネツィア … スクオラ・ディ・サン・ロッコ


製作 / 1996 アメリカ [英語作品]
監督 / ウッディ・アレン

キャスト / ジョー … ウッディ・アレン
ステフィ … ゴールディ・ホーン
ジューナ … ナターシャ・リオン
媒体 / VIDEO,LD,DVD
サウンドトラック / Everyone Says I Love You (アメリカ盤)

Official site
Official site (英語)

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戦火のかなた / Paisa'

1943−44年、シチリア、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、ロマーニャ地方、 ポー河畔。第二次大戦末期のイタリア。連合軍のシチリア上陸から、イタリア各地でのアメリカ兵とイタリア人との交流を、連合軍の北上にそって、6つの話で描くオムニバス。「無防備都市」「ドイツ零年」と並び、ロッセリーニの戦後3部作の1本。

シチリア。アメリカ兵の道案内をすることになったカルメラ。途中の城塞にカルメラと共に留まることになったジョーはイタリア語が話せない。話題にと、家族の写真を見せるのにライターを点けたところを狙撃されてしまう。

ナポリ。酔っ払ったアメリカ人MPは、少年に靴を盗まれてしまう。翌日、犯人を見つけ、家に案内させたが、そこで家を失った人々が暮らす光景を見た彼は、靴を取り返す気が失せてしまう。

ローマ。フレッドが出会った娼婦のフランチェスカ。フレッドは彼女にローマ解放時に会った娘に恋をした話をするが、フランチェスカこそ、その娘であった。

フィレンツェ。従軍看護婦のハリエットは、パルチザンである恋人が負傷したと聞き、レンツォと共に前線へ向かう。途中ハリエットの目の前で、ひとりのパルチザンがファシストに撃たれ命を落とす。

ロマーニャ地方。フランチェスコ会の修道院に身を寄せる3人の従軍牧師。だが、そのうち2人がカトリックではないとわかると修道院は大騒ぎに。その夜、ふたりの異教徒の魂を救うため、修道士たちは断食をするのだった。

ポー河畔。連合軍と共に戦うパルチザン。彼らに協力した者は殺され、また、彼ら自身もドイツ兵から逃れることはできなかった。

敵か見方か、という単純な図式では片づけられない大戦末期のイタリア。パルチザン(ドイツ軍、ファシストに対しレジスタンス活動を行った市民)、ファシスト、アメリカ兵、ドイツ兵。同じイタリア人同士であっても敵対し、また、外国人には見方もいれば敵もいる。それぞれのエピソードが語るのは、戦争の罪であり、悲惨さである。戦争が起これば必ず何かを失うものだということを、果たして我々は理解していただろうか。そして、同じ敗戦国ではあっても、日本とイタリアはまったく違った状況であったということを再確認させられる。

解放(ドイツ軍とファシストの支配から脱すること)に至るまでの経緯も都市により大きな違いがあることを、この作品は、描き出している。そういった点にも注意しつつ鑑賞したい。

4話目でハリエットたちがアルノ川の対岸へ抜けるために利用するのは「ヴァザーリの回廊」。ピッティ宮殿から、ポンテ・ヴェッキオの上を通り、ウフィッツィ美術館、ヴェッキオ宮殿へと抜ける約1kmに及ぶ回廊である。16世紀、メディチ家のコジモ1世の命により、ヴェッキオ宮殿−ピッティ宮殿間を外に出ず移動できるようにしたもの。途中には、サンタ・フェリチタ教会があり、ミサもこの回廊から参加することができた。現在は、ウフィッツィ美術館の一部として、自画像のコレクションを中心に17,8世紀の絵画が展示されている。

3話目に登場するミーキは、実際にパルチザンの活動に協力していたことがあり、その体験をロッセリーニに語ったという。そういった実体験が、本作品にも影響を与えているのかもしれない。

イタリア解放の流れ

  • 1943年7月10日 連合軍シチリアに上陸
  • 1943年9月8日 イタリア政府は連合軍と休戦協定を結んだことを公表。これを機に、ドイツ軍はナポリ以北を支配
  • 1943年10月1日 ナポリ、市民の蜂起によりドイツ軍を撤退させる → 参考 : 「祖国は誰れのものぞ
  • 1944年6月4日 ローマ、連合軍により解放される
  • 1944年8月11日 フィレンツェ、パルチザンにより解放される → 参考 : 「サン・ロレンツォの夜
  • 1945年4月25日 北イタリア主要都市、パルチザンにより解放される

ロケ地 / シチリア、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、ロマーニャ地方、 ポー河畔

ローマ: コロッセオ、サン・タンジェロ城、ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂 … 記録映像として

フィレンツェ : ピッティ宮殿、ボーボリ庭園、ヴァザーリの回廊、ウフィッツィ美術館

シチリア、ナポリ、ロマーニャ地方、 ポー河畔 : 詳細なロケ地は不明


製作 / 1946 イタリア
監督 /
ロベルト・ロッセリーニ
脚本・助監督 /
フェデリコ・フェリーニ

キャスト / シチリア : カルメラ … カルメラ・サツィオ
ジョー … ロバート・ヴァン・ルーン
  ナポリ : アメリカ人のMP … ドッツ・M・ジョンソン
少年 … アルフォンシーノ・パスカ
  ローマ : フランチェスカ … マリア・ミーキ
フレッド … ガー・ムーア
  フィレンツェ : ハリエット … ハリエット・メディン (ハリエット・ホワイト)
レンツォ … レンツォ・アヴァンツォ
  ロマーニャ地方 : カトリックの従軍牧師 … ビル・タッブス
  ポー河畔 : デイル(連合軍) … デイル・エドモンズ
チゴラーニ(パルチザン) … チゴラーニ
媒体 / VIDEO, LD, DVD

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