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トスカーナの休日 / Under the Tuscan sun

2000年代、コルトーナ、フィレンツェ、ポジターノ、ローマ、サンフランシスコ。離婚したフランシスは、イタリア旅行中に偶然見つけた家を購入してしまい、イタリア生活を始めたのだった。

仕事も家庭も順調なはずだったフランシスに突然突きつけられたのは、夫からの離婚要求。落ち込むフランシスに、友人たちはトスカーナ旅行をプレゼントした。ところが、フランシスはトスカーナ州の田舎町・コルトーナの古い家を衝動買いしてしまい、そこで暮らすことに。不動産業者のマルティニ、家の修理をするニーノやポーランド移民らとの交流を通して、フランシスは徐々に過去の痛手を忘れ、イタリアでの生活に馴染んでいく。

外国に行けば環境が変わって人生が一変、というのではなく、大きな買い物をした後に後悔したり、見惚れるようなイタリア男との恋愛がすれ違いに終わったりと、期待はずれや小さな挫折がいくつもあるのはリアル。失敗したフランシスに「立ち止まっていないで進みなさい」と背中を押してくれるキャサリン、パティ、マルティニが、それぞれ人間味があり、魅力的に描かれている。行きつ戻りつして、歩を進めてきたフランシスも若い二人の背中を押してやることで、「家族」を手に入れる。

回り道のように見える人生も、周到に用意すればやがてそれは実を結ぶのだ。

作中で名前の挙がるイタリア映画が2本。「マエストロ(フェリーニ)に声をかけられた」ことを自慢するキャサリンが、アニタ・エクバーグを気取って噴水に入り「甘い生活」の有名なシーンを再現し始める。また、そのキャサリンがお気に入りのヒロインとして名前を挙げるのは、「カビリアの夜」のカビリア。他にも、白いスーツのハンサムなイタリア人が、マルチェロという名だったり、フランシスに優しくするマルティニの物腰が「旅情」のロッサノ・ブラッツィみたいだったり、友人・パティの病室の窓からの光景が「眺めのいい部屋」のそれのようだったりと、古いイタリア映画を思い出す要素がいくつかある。

また、トスカーナの四季やポジターノ、ローマの風景が楽しめるという点でも楽しい映画。

マルチェロが勧めるお酒はリモンチェッロ。アマルフィ、ソレントやカプリ島付近一帯で生産されるリキュール。アルコール度数が高く、甘い食後酒である。

パヴェルが参加する旗投げは、イタリア各地で見られ、それぞれの祭りの前にコントラーダ(街区)の代表が、旗(バンデイエッラ)を回したり投げたり他の旗手と交換したりする競技。

パティの出産後、ドアにリボンが飾られる。ピンクなら女の子、水色なら男の子の赤ちゃんが、その家に生まれたことを示すサインなのだそう。

原作はアメリカでベストセラーとなった同名の小説。夫婦でイタリアに別荘を購入した時の体験を綴ったものである。 原作では、主人公が離婚後に新たなパートナーとイタリアに別荘を購入したとのこと。映画向けに脚色されている部分も多いらしい。

踊れトスカーナ!」では、畑の向こうから聞こえる声だけの出演だったマリオ・モニチェッリが、本作では毎日祠に花を手向ける老人として”声なしの”出演。でも、味があるんだなあ。


ロケ地 / コルトーナ、モンテプルチアーノ、フィレンツェ、ローマ、ポジターノ

コルトーナ

ウンブリアとの州境に近い高台にある城壁に囲まれた都市。エトルリア人によって築かれたとされている。なお、「甘い生活」の再現シーンの噴水は、美術スタッフにより製作されたもの。

  • シニョレッリ劇場 … 映画館のシーン

モンテプルチアーノ

旗投げのシーン

フィレンツェ

  • ドゥオーモ広場 … 観光で訪れる
  • ドゥオーモのクーポラ、ジョットの鐘楼、ベッキオ宮の塔 … パティの病室の窓から見える光景

ローマ

  • ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂 … フランシスがローマに着くシーン

ポジターノ

マルチェロに連れて行かれる海岸沿いの街


製作 / 2003 アメリカ
監督 / オードリー・ウェルズ

キャスト / フランシス … ダイアン・レイン
パティ … サンドラ・オー
マルチェロ … ラウル・ボヴァ
マルティニ … ヴィンセント・リオッタ
キャサリン … リンゼイ・ダンカン
原作 / フランシス・メイズ 『トスカーナの休日』 早川書房  宇佐川 晶子【訳】
媒体 / VIDEO,
DVD
サウンドトラック / トスカーナの休日

Official site
Official site (英語)

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テオレマ / Teorema

1960年代、ミラノ。ブルジョアの家庭に突然現れた青年と彼を巡る家族の行動。

ある日一通の電報が届けられ、それによってパオロの家庭に《彼》が来ることが知らされる。《彼》は、当然であるかのようにパオロたちの生活に入り込んできた。そしてパオロの家族4人、メイドのエミリア、それぞれと性的関係を持つ。そしてまた一通の電報が届くと、《彼》は去ると言う。《彼》が去ると同時に、パオロの家庭は少しずつ崩れ始めていた。

《彼》が現れたことも、去ることも、行為に至ることも、その後のそれぞれの行動も、その理由や必然性は一切説明されない。
《彼》を巡る5人の間の関係は《彼》以前も《彼》以降も変わりない。《彼》を巡るドロドロとしたメロドラマ的感情などはまったく描写されていないのである。あるのはその事象だけ。そして、セリフが最小限であると同時に、部屋も殺風景極まりない。それぞれの部屋も、キッチンも。本能的な行動に説明は邪魔なだけということなのだろうか。それとも、《彼》自身が理由であり、必然性であるのだろうか。

《彼》によって剥がされていく理性の薄皮、そして表向きの顔。5人にとって《彼》は神だったのか、悪魔だったのか。不自由のないブルジョアの生活の中で、見過ごしてきたもの、押え込んでいたものに気づいてしまったら、今までの生活を続けていては満たされることはないのかもしれない。


ロケ地 / ミラノ、ローマ、 エトナ山 他

ミラノ

  • ライナーテからアレーゼにかけての工業地帯 … 冒頭の工場の出口のシーン
  • レ・マルチェッリーネ研究所 … オデッタの学校
  • サン・シーロの屋敷 … パオロの家の外部
  • パリーニ研究所 … ピエトロの学校
  • ミラノ近郊のチャンピ農地 … 来訪者がパオロを誘惑するシーン
  • ミラノ中央駅 … パオロが全裸になるシーン

パヴィア−ミラノ間にあるトッレ・ビアンカ酪農場 … エミリアの空中浮遊のシーン

ローマ

  • トリオンファーレ界隈の屋敷 … パオロの家の内部

シチリア

  • エトナ山 … パオロが絶叫するシーン

製作 / 1968 イタリア
監督 /
ピエル・パオロ・パゾリーニ
音楽 /
エンニオ・モリコーネ

キャスト / 来訪者 … テレンス・スタンプ
ルチア(母) …
シルヴァーナ・マンガノ
エミリア … ラウラ・ベッティ
オデッタ(娘) … アンヌ・ヴィアゼムスキー
パオロ(父) … マッシモ・ジロッティ
ピエトロ(息子) … アンドレ・ホセ・クルス・スブレット
アンジェリーノ(配達人) … ニネット・ダヴォリ
媒体 / VIDEO,LD,DVD

Gallery

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鉄道員 / Il ferroviere

1950年代、ローマ? 幼いサンドロの眼を通して語られる初老の鉄道機関士とその家族の生活。戦後イタリアの庶民の日常。

サンドロの父アンドレアは特急を運転する機関士。ギターも上手く、行きつけのオステリア(居酒屋)では人気者であった。サンドロは父を慕っていたが、年の離れた姉ジュリアと、兄マルチェロは、それぞれ問題を抱え、素直になれず、父と反発してばかり。ある日、アンドレアは不注意から事故を起こしてしまい、それをきっかけに歯車が狂い始める。

淡々としたトーンで描かれるアンドレアの家族の生活。アンドレアは仕事が終われば一杯ひっかけ、仕事をしない息子に小言を言い、娘をどう扱っていいのかわからずぶっきらぼうになる。息子や娘は親に対して、後ろめたい気持ちを持っていたり、相手をいたわる気持ちを素直に表現できなかったり。

豊かではない庶民の暮らしだが、それは不幸だということではない。そこには哀しみだけでなく歓びも確かにあるのだから。

しんみりと3人で向かえたクリスマスの晩。アンドレアの同僚リヴェラーニが知人をアンドレアの家に集め、パーティーになる。おせっかいではあるが、その粋な計らいに3人は喜んだに違いない。クリスマスは家族で過ごすものだが、たまには大勢でにぎやかに過ごすのも悪くないと。

アンドレアが取り調べに出かける日、そしてラスト直前で、妻・サーラがコーヒーを淹れているときに使っているのは、ナポリ式のコーヒーメーカー、ナポレターナ。お湯が湧いた後逆さにする淹れ方が特徴的。


ロケ地 / ローマ?

駅での会話/アナウンスから、特急が停車する駅であること、その駅を出発した特急はフィレンツェ、ボローニャ、ミラノへ向かうことがわかる。また、ジュリアとレナートが「フィレンツェは4時間もあれば行ける」と話していることから、ローマが舞台ではないかと思われる。

そうするとテルミニ駅とその周辺がロケ地だろうか?


製作 / 1956 イタリア
監督 /
ピエトロ・ジェルミ

キャスト / アンドレア … ピエトロ・ジェルミ
サンドロ(サンドリノ) … エドアルド・ネボラ
リヴェラーニ … サロ・ウルツイ
サーラ … ルイザ・デラ・ノーチェ
ジュリア … シルヴァ・コシナ
媒体 / VIDEO,LD,DVD 鉄道員 デジタル・リマスター版 [DVD]

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特別な一日 / Una giornata particolare

1938年5月3日、ローマ。ヒトラーがローマを訪れ、記念式典が行われた”特別な一日”。その日、式典に参加しなかった男女が過ごしたもうひとつの”特別な一日”。

ローマを訪れたヒトラーのため行われる記念式典。ローマ中の人が参加するという式典に、夫と子ども6人を送り出したアントニエッタ。アパートの住人もほとんど出かけてしまったのだが、逃げた九官鳥を追って訪れた部屋には、式典に出かけず残っていたガブリエレがいた。たくさんの人が暮らすアパートの中で、式典に出かけなかった二人。ことばを交わすうちに、ふたりはそれぞれが疎外感を感じていたことを知り、やがてこの日、関係を持ってしまう。

政治を動かすのは男であり、いかにファシズムに傾倒していようと、式典に家族を送り出した後、中継のラジオを聞くしかない主婦、アントニエッタ。一方、ガブリエレは休職中のアンチ・ファシスト。共通していたのは社会の表舞台に立つことのない、疎外された者だという気持ち。大勢から爪弾きにされた者たち。日々繰り返される日常から離れる一瞬の時を共有した男女。ふたりの間の心理的距離が徐々に縮まっていく様をローレン、マストロヤンニが好演。

中庭を挟んで二つの部屋の間で展開されるドラマ。中庭から上層階にある部屋へ入り込んでいくカメラワークも手伝って、ヒッチコックの「裏窓」のような雰囲気を感じさせる。

訪ねてきたガブリエレにコーヒーを出すアントニエッタ。お湯が湧くのを確かめながら、コーヒーを淹れる姿はいかにも主婦の日常らしい。使われているのはナポレターナと呼ばれるエスプレッソ・メーカー。

息子が隠し持っていたヌード写真を見つけたアントニエッタが言う。「盲目になるわよ!」。もともとカトリックでは、自慰は禁じられた行為だが、当時のイタリアでは性に関する意識がかなり保守的だったようで、自慰をすると盲目になるなどと言って戒めていたという。そのような状況下で、ふたりの過ごした一日は、現代の我々が思っている以上に”特別な”ものだったのかもしれない。


ロケ地 / ローマ

  • 4月21日通りのアパート … アントニエッタの暮らすアパート。ローマ北東部に実在する。中庭に面したガラス張りの階段部分が印象的なこのアパートは、建築家マリオ・デ・レンツィによるものであり、1937年に完成した。竣工式にはムッソリーニも参列したという。これは大衆を味方にするため、この時期に建設された低所得者向けの集合住宅のうちのひとつであり、まぎれもない”ファシズムの産物”である。
  • コロッセオ、オスティエンセ駅、クイリナーレ、ヴェネツィア広場(無名戦士の碑) … ヒトラーのローマ訪問時の記録映像部分

製作 / 1977 イタリア・フランス
監督 /
エットレ・スコーラ

キャスト / アントニエッタ … ソフィア・ローレン
ガブリエレ …
マルチェロ・マストロヤンニ
マリア・ルイ … アレッサンドラ・ムッソリーニ
(あのムッソリーニの孫娘であり、ソフィア・ローレンの姪。現在は下院議員でもある)
媒体 / VIDEO, LD, DVD cover

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トスカニーニ 〜愛と情熱の日々〜/ Il Giovane Toscanini

1880年代、ミラノ、ブラジル。オペラの指揮者として知られる、アルトゥーロ・トスカニーニが、指揮者として初舞台を踏むまで。

トスカニーニはチェロの奏者としてミラノ・スカラ座のオーディションを受けに来たが、審査員たちの態度の悪さに腹を立て、自らそのオーディションを降りてしまう。しかし、その時のオーディションがきっかけで、地方公演をする劇団のオーケストラの一員としてブラジルへ行くことになった。それは、子どもの頃、スカラ座で観た想い出の歌手、ナディナ・ブリチョフとの仕事でもあった。しかも演目は同じヴェルディの「アイーダ」。

希望に燃えて旅立ったのだが、船の中で、また、ブラジルで彼が目にしたものは、奴隷であるがゆえに満足な治療を受けられずに死んでいく人々であった。彼が音楽の道へ進むきっかけとなったナディナでさえ、奴隷を雇うことが彼らの生活を保証することになるのだという。そのような現実をまのあたりにした彼は、公演をすることすら投げ出してしまうのだが……。

若くて才能があり、そしてまっすぐな青年として描かれるトスカニーニ。彼の現実に対する疑問が、変化を促す情熱が、少しずつ実を結んでいく様子は、順調すぎる印象も受けるが、彼のその若さゆえの行動は、忘れていた何かを思い出させてくれる。実際のトスカニーニもブラジル公演をきっかけに、指揮者として活動するようになり、その後、因縁のスカラ座でタクトを振ることになる。

作品中登場するオペラのシーンも豪華な雰囲気。舞台演出家としても活躍するゼフィレッリならでは。

なお、作品中トスカニーニの才能を物語るエピソードとして、60曲あまりを暗譜しているという話が出てくるが、実際のトスカニーニは極度の近視でそのために暗譜せざるをえなかったのだという。

アイーダ: ヴェルディ作曲によるオペラ。スエズ運河の開通を記念して、エジプト政府から委託されて作曲したもの。
[あらすじ] エチオピアの王女アイーダは奴隷としてエジプト王女アムネリスに仕えている。アイーダ、アムネリスは同じ男性に片思いをしているが、その男性ラダメスはアイーダに恋していた。エチオピア軍を征討するための総指揮官にラダメスが選ばれ、アイーダは祖国への思いと恋人への思いに挟まれて苦しむ。ラダメス率いるエジプト軍が戦いに勝ち、アイーダの父も捕虜となった。ラダメスはエジプト国王から王女アムネリスを与えられ、将来エジプトの国を継ぐことに。また、アイーダは父からそそのかされラダメスから機密情報を聞き出す。そのことに気づいたラダメスはアイーダの父娘を逃がす一方、自らは祭司長に身柄をあずけた。ラダメスは二度とアイーダに会わないのであれば助けようというアムリネスの申し出を断り死刑になることが決まる。そして地下牢に忍び込んだアイーダと二人、手を取り合いながら死んでいくのであった。


ロケ地 / ?

ミラノのスカラ座内のシーンがあるが、セットによる撮影か??


製作 / 1988 イタリア[英語作品]
監督 /
フランコ・ゼフィレッリ

キャスト / トスカニーニ … C. トーマス・ハウエル
ナディナ … エリザベス・テーラー
ドン・ペドロ …
フィリップ・ノワレ

媒体 / VIDEO

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